2014年1月29日水曜日

最後の合宿もやっぱりプロレス

ゼミ15期生の最後の合宿。

卒業研究発表会に向けての練習をする。

 

合宿前も,ポスター作りでたいへんだった。

ポスターの色塗りを始めてから間違いに気づき,やり直すゼミ生もいた。

そのゼミ生はショックで,泣き出しそうだった。

私がそのことを指摘すると…

「先生,もうそれ以上言わないでください。言われると私…」

かわいそうになって,私が一人でぼそぼそ食べていたポテトチップスを分け与えた。


 (↑ ショックを受けるゼミ生とポテトチップス)


皆(学生も教員も),へとへとになりながら,合宿に突入した。

 
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発表練習が始まった。

間発表会で経験があるので、手慣れた感じだ。


 (↑ 発表の練習風景)
 
 
今回の合宿では,期間中に補講の授業や試験が入り,十分に時間が取れない。

あわただしい日程だ。

 しかし,そんなことにはおかまいなく,緊張感なく遊んでしまうのが,この15期生の特徴だ。

 そのために私がルールを作る。

私「~を完成させて合格しないと,食事には行ってはいけない。」

 合格できず,取り残されたゼミ生はA男にB子。

見かねたC子が、B子を厳しくサポートする。

C子「そこに座って。もっとシャキッとして。」(厳しい顔つき)

でもB子はいつものようにへらへらしている。

C子「B子を見捨てて,ご飯を食べに行くと思っているの!」(イライラしながら)

 


B子は周囲にゼミ生がいると集中できない様子。

結局,B子を残して,C子は部屋に戻ってしまった。

 

一方,D男もへらへらしていて,畳に寝そべり,他のゼミ生にからんでいる。

女の子に近寄り、ポーズをとってにやにやしている。

ゼミの女の子たちは「D男,気持ちわりぃ~」を連発。

 
 
 (↑ 調子にのるD男)


私が食事などで部屋を離れると…

調子に乗ってゼミ生たちが、大広間のステージにのって歌を歌い始めた。

  
(↑ 歌を歌っている4人)


そして…

ついにプロレスが始まった。

広い場所があると,プロレスをやりたくなるらしい。

夏の合宿では,男一人に女二人が立ち向かってプロレスをやっていた。

今度の合宿では女の子同士。

女の子同志だが,けっこう激しい取り組みだ。

 


 (↑ 女の子2人のプロレスの様子)


ふつう,女の子がプロレスをやりたがるか?

ぶっとんだところのあるゼミ生たちだった。

 
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しかし…

しんみりと、こんなことを言うゼミ生がいた。

「最後にE子とプロレスができてよかったわ。」

体と体が激しくぶつかり合うことで,これまで以上に親しみを感じたらしかった。
 

そしてE子も言った。

「ゼミが始まって2年がたったけど,やっとゼミに馴染めた気がする。」

E子はしゃべりはするが,親しいゼミ生を除いて,距離を置くタイプ。

そんなE子がゼミ生にやっと馴染めたというのだ。

私も,E子が皆とプロレスをするなんて意外だった。

体を触れ合うということは、気持ちが近づいていた証拠だった。

プロレスにもこんな効果があったんだね。

 
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ところで…

肝心の卒業研究の発表練習は,まあまあだった。

なんとかぎりぎりの合格ラインに達した。

 

中間発表会で,自分の発表に不満足だったF子は頑張った。

皆が寝た後も,目をつぶって布団のなかで原稿を思い出していた。

表現があやふやな部分があると,枕元に置いてあった台本を持って,部屋から出る。

そして照明がついている階段に行って,台本を確認した。

プロレスもやったけど,発表練習も頑張っていたF子だった。

 

このようにして、ゼミ15期生の最後の合宿は終わったのだった。

 

 

 

 

2014年1月15日水曜日

スシローで一息

年が明けて最初のゼミ。

ゼミ4年生がぞろぞろ集まってくる。

卒業研究の本文と抄録は提出したが、発表会が残っている。

これからポスターと発表原稿を準備するのだ。

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A子がポスターの下図を持ってきた。

A子「先生、できました。見てください。」

私「A子にしては、下図が出来上がるのが早いな」

A子「もう、苦しみたくはないので…」

A子は本文の作成がかなり遅れ、締切に間に合わせるためにかなり苦労した。

だから今回は早めに完成させたいと思っているのだろう。


A男もポスターの下図を持ってきた。

バランスよく上手にレイアウトしてある。

私「お~、A男にしてはレイアウトが上手じゃん。」

私は率直な感想を口にした。

中間発表で作成したA男のポスターは、内容はしっかりしているのだが、レイアウトがしょぼかった。

それが、今回はなかなか上手になっている。

皆、学習効果が現れているね。

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B子がポスターの下図を持ってきた。

その下図をよくよく見ると、内容がおかしい。

データと解釈が食い違っている。

B子の抄録を見直す。

私「これ、おかしいのじゃないの?」

B子「やっぱりー。なんか、おかしいと思っていた。」

私「抄録は、昨日、印刷業者に渡した。間違ったまま印刷されてしまう。」

B子「ヤバくない?」

私「ヤバイ。」

B子はしばらく迷っていたが、この際、抄録を書き直すことを決心した。

そして、すでに印刷業者に渡っている原稿と差し替えが可能かどうか、打診することになった。

緊急事態だ。

私はすぐに研究室に戻り、印刷業者に電話する。

私「あの~、その~、お忙しいところ恐縮ですが~、昨日お渡しした原稿の一部を差し替えたいのですが…」(丁重な雰囲気)

業者「すでに作業が進行しています。その原稿は、冊子の前の方のページですか、後ろの方のページですか。」(毅然とした態度)

私「おそらく、真ん中あたりではないかと…」

業者「微妙ですね。今日の作業で、そのあたりまで終了していますから。でも、まあ一応、原稿を受け取りに明日うかがいます。」

演習室に戻ってそのことをB子に伝えた。

B子はさっそく抄録を修正し始めた。


(↑ ミスが見つかってあわてるA子)


私が密かにB子の写真を撮っていると、その私の姿を面白がって、他のゼミ生が私を写真に撮っていた。


 

(↑ 私を撮影しようとしているゼミ生2人)



なんとか、抄録の差し替えができそうでよかった…

*******

おなかがすいて、残っていたゼミ生4人とご飯を食べに行く。

スシローだ。

ゼミ生たちは、猛烈な勢いで注文しまくり。

圧倒されてしまう。

いったい何皿食べるつもりなんだろう。


(↑ 猛烈な勢いで食べるゼミ生たち)



B子「先生も注文しないと。誰も注文してくれないからねっ」

私「わ、わかった…」

私は、まぐろやサーモンの定番を注文する。

ゼミ生たちは、猛烈な勢いで食べたかと思うと、

「もう、おかなか一杯」と箸を置いた。

結局、8皿~10皿程度で、それほど多いわけではない。

やっぱり女の子。

ちょっと卒業研究で疲れたので、一息つけてよかったね。






2014年1月9日木曜日

チョコパイをめぐる攻防

昼休み…
 
研究室でランチを食べていると、ドアを激しくノックする者がいる。
 
こんなに乱暴にノックするのはゼミ生に決まっている。
 
やはりゼミ3年生のA子が入ってきた。
 
今日はおしゃれな私服姿。
 
夕方に新年会があるという。
 
A子は研究室に入るなり、
 
「先生、ここで着替えていいですか。これから武道場で授業があるのです。」
 
と言った。
 
もうすぐ昼休みが終わって授業が始まるので、急いでいるのだろう。
 
「いいよ、着替えている間は、俺はこっちを向いていればいいんだな。」
 
と言うと、
 
A子「どちらでもいいです。」(さばさばとした雰囲気)
 
私「・・・・・・・」
 
着替えを見られてもいいっていうこと?
 
もちろん、私はうつむいてランチをもくもくと食べていた。
 
A子は着替え終わったらしく、
 
「脱ぎっぱなしだけど、いいですね。それから先生のスリッパ借りていいですね。借りていこうっと。」
 
と言いながら、荷物を置いて、あわたただしく研究室から出て行った。
 
A子が研究室に入ってきて出ていった間は、わずか5分程度。
 
あっという間の出来事だった。

*******
 
やれやれと思ったその時…
 
またもや研究室のドアを叩く者がいる。
 
今度はゼミ4年生のB子とC子だった。
 
B子・C子「先生、合宿までに卒業研究の何をやればいいの?」(のんきな雰囲気)
 
私「ポスターの下書きを描いて、それから印刷して、それから発表原稿を作って~」(いかにもたいへんだぞという雰囲気)
 
B子・C子「え~、たいへんそう~」
 
私「まっ、間に合わなければ、2月上旬に特別発表会に延期してもいいけどね。」(嫌味っぽく)
 
B子・C子「そんなの、無理、無理」
 
私「それなら、今日やるんだな。」
 
そこでB子とC子は、卒論をやる気になったようだった。
 
そこにD子も加わって3人で卒論をやり始めた。
 
********
 
私が大学院生の指導で、10分程度研究室を留守にして、戻ってくると…
 
3人がチョコパイを食べている。
 
実は、チョコパイを買って研究室の書棚の下に置いてあった。
 
ただし、その上にバックなどを置いて、見つからないようにしてあった。
 
まさか、私の大切なチョコパイを…
 
私は心配になって言った。
 
私「これ、俺のチョコパイだろう?」
 
B子「違います。」(きっぱり)
 
正直に白状しないので、
 
私「あっ、全部チョコパイが食べられている!」(悲しそうな声で)
 
D子「えっ、全部!」(おどろいた表情で)
 
B子「違うよ!何個か残して持ってきたから」(あわてて)
 
私のチョコパイを探し出し、皆に配ったのはB子であることが判明した。
 
D子「なんだ、先生の言うことは信用できんな!」
 
私「それはこっちが言うセリフだよ。」(食べたことを正直に白状しなかったくせに)


(↑ ゼミ生に食べられたチョコパイ)

 
*******
 
3人はチョコパイを食べてはいるが、卒論はあまり進んでいないようだった。
 
C子「先生~、どうやってポスター描いたらいいの~」
 
C子はすぐに教えてもらおうとする。
 
私「そんなに媚び売っても、俺が教えると思う?」
 
C子「私、先生がそばにいないとできないもん」
 
C子に限らず、ゼミ生たちは様々な理屈を持ち出して、教員にやらせようとする。
 
それを、いわばアメとムチで、ゼミ生たちに自分で考えさせようとするのが教員の仕事。
 
年が明けて、再びゼミ生たちとの戦いが始まった。

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しかし…
 
私はわかっていた。
 
ゼミ生たちがわいわい言いながら卒論をやるのは、もう数週間だけだということを。
 
卒業研究発表会が終われば、ゼミ活動は終わる。

ゼミ生全員が集まることは、もうないのだ。

その寂しさは、この時期の4年生には自覚できないだろう。

目の前にある卒論のことで、頭がいっぱいだから。

でも、私にはわかっていた。毎年経験しているから。

だから…

年が明けると、私の心の中に寂しさが漂い始める…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2014年1月5日日曜日

ゼミの卒業生からの年賀状

毎年お正月になると、ゼミの卒業生から年賀状が届く。 

結婚して子どもが生まれると、その子どもの写真が写った年賀状が。

結婚していない場合は、旅行先などでの自分を写した年賀状が。

今年もさまざまな年賀状が届いた。



(↑ 今年届いたゼミの卒業生からの年賀状) 
 


今年は30人のゼミ卒業生から年賀状が届いた。

ゼミの期ごとの内訳は、次の表のとおり。


 

ゼミ1期生は卒業して10年以上がたつが、年賀状のやり取りをしているゼミ生がいる。

顔はずいぶん大人っぽくなり、学生時代の面影はなくなりつつある。

それでも写真を見れば、誰なのかすぐにわかる。

なんとゼミ11期生は、半数以上と年賀状のやり取りがある。

ゼミ11期生は、個性豊かで、まとまりがとてもよかった。

NHKの「中学生日記」に出演していたゼミ生もいれば、童話を書いて賞をもらい、イタリア旅行したゼミ生もいた。

また現役で教員採用試験に合格したゼミ生もいたし、銀行員をやりながら教員をめざし、一発で合格したゼミ生もいた。

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卒業生からの年賀状を見ると、在学当時の出来事が思い浮かぶ。

ゼミ生ひとりひとりに、エピソードがある。

そういえば、こんなことがあったなと昔を振り返る。

卒業して年月がいくらたっても、浮かんでくるのは大学当時の顔だ。

私の心のなかのゼミ生は、何年たっても若い。

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返信する私の年賀状は、最近のゼミの様子を書く。

今年の年賀状には、ゼミで使っている演習室の様子や、同窓会で写したプリクラを載せた。



(↑ 今年のゼミ卒業生向けの年賀状)

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長い文章が書かれた年賀状があった。

A子からだった。



(↑ A子からの年賀状)

私が、幸せな人生を送ってほしいと特に願うゼミ生だ。

A子は卒業研究を提出した4年生の冬、発表会を目前にひかえていた時だった。

卒業研究の発表をし、4年生の必修科目の試験を受ければ、卒業できる状況だった。

しかし、A子の身に降りかかった悲惨な出来事によって、卒業が半年延期されてしまったのだ。

A子の受けた苦痛を思うと、今でも心が痛む。

卒業後、何年かして縁があって結婚し、そして今年出産予定だという。

よかった、よかった。

A子の年賀状には、陽気にこう書かれてあった。

「先生も定年までまだまだ頑張ってね!ずっと応援している!!」

明るいA子に、こちらが励まされている…




2013年12月30日月曜日

金山の夜に笑い声が響く

12月29日午後6時。

金山アスナルのマツモトキヨシの前。

なつかしい顔がそろう。

今年の春卒業したゼミ14期生。

今日は同窓会。

久しぶりに会ったのに、まるで在学当時の雰囲気で、皆が集まっている。

同窓会なのに、単なるゼミのコンパという感じだ。

「先生!演習室に座椅子が入ったというじゃあないですか。私たちの時にはなかったのに…。今日は先生のおごり?」

ゼミの卒業生たちはなかなか手厳しい。

(注釈:スポーツで足腰を痛めているゼミ生は、卒業研究で長時間座っていることが苦痛なので、今年度から座椅子を導入した。)

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忘年会でにぎわう金山駅の近くの「桜坂」という店に入る。

そして同窓会が始まる。


(↑ 同窓会が始まった)


私が準備したゼミ卒業生それぞれに対するメッセージを書いた用紙を配布する。

皆そのメッセージを読んでいる。


(↑ 私のメッセージを読んでいるところ)
 

そして、あちこちで近況報告が始まる。

皆笑顔で語るが、仕事の話はハードな内容だった…。

「大学時代と違うことは、一日のなかで笑うことがなくなったこと。お客さん相手に愛想笑いはよくするが…」

「残業しても残業手当はなく、勤務して1年間はボーナスも出ない。」

「帰るのは早くて午後9時。だいたいは終電で帰る。夜食事はせず、1日2食。」(体重が大学時代より4キロ減ったとのこと)

「午前4時30分に起きて、7時前に職場について、皆が出勤する前に、仕事の準備をしている。」

「疲れて帰るので、どんなに空腹でも先に寝たいと思う。こんなことは大学時代にはなかった。」

ハードな労働環境だ。

そうかと思えば、ほぼ毎日午後5時30分に帰れる人もいた。

でもこの人は「パワハラの被害にあって、部署が変わった。」とのこと。

みんな、社会人になるとさまざまなことを体験している。

皆の近況報告を聞いていると、正直言って、胸が痛くなる。

ハードな労働環境を、ひいひい言いながら頑張っている。

心身が不調にならないか心配だ。

「こんなに働かせるなんて、日本の社会はどこかおかしい!」

こんな私でも、誰かに向かって叫びたくなる。


そして思ったことがある。

ゼミ卒業生の話を聞いていると、大学生はぬるま湯につかっているね~

朝早く起きれないとか、今日はやる気が起こらないと言って授業をさぼったり。

今のゼミ生の様子を見ていると、社会人になってしっかり務まるのかと心配になってしまう…

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店を出た後、プリクラを撮りに行く。

そういえば、在学当時もゼミのコンパの後はプリクラを撮りに言ったよな。

実は、若者に交じって、わたしのようなおじさんがプリクラの店に入るのは、非常に抵抗がある。

特に若い女の子たちから、じろじろ見られているような気がして、落ち着かない。

しかし、ここは我慢しなければならぬ。

それにプリクラは、ゼミ生たちがかわいく写るので(ほとんど詐欺だが)、見るのが楽しい。



 
 (↑ 皆でプリクラを撮った)
 

なつかしく、楽しい同窓会になった。

また皆で会おうね。
 

2013年12月26日木曜日

好きではないけど交際します

JR刈谷駅、午後6時20分。

ゼミ3年が顔をそろえる。

皆おしゃれをしている。

 
今から忘年会。

 費用は学園祭の収益金を当てるので、実質1000円の負担ですむ(不足分は私が払うことになっている…)。

 サラリーマンが集う居酒屋で、学生にしてはやや高級な店。

 掘りごたつだったが、テーブルが狭いので、身を寄せ合って座る。

 忘年会が始まった。





酒が進むにつれて、A子がB子に尋ねる。

「彼とどんな風に付き合い始めたの?」

すると…

「告白された時、好きではなかったけど、嫌いではなかったので、付き合うことにした」とB子は言った。

「ええ〜、マジ〜」と私は言った。

好きではないのに交際を始めることは、私には考えられない。

私は疑問に思い、質問を重ねる。

「それって、どいうこと?…」

「男の人に私から告白できないし、せっかく告白されたので、このチャンスを大切にしたいと思って…」

 確かに一理はある。せっかくのチャンスを無駄にしたくはない。


とりあえず付き合ってみて、好きになれなかったら別れるということなのだろう。

でも一度交際を始めてしまうと、よほどのことがない限り、別れを告げることは難しい。

すごく嫌いにならない限り、別れを言い出しにくいのではなかろうか。

だらだらと付き合いが続いてしまうことにはならないのだろうか。

幸い、B子の場合は愛が育まれて、現在も交際を続けている。

***********

ふと思い出したことがある。

NHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」の舞台となった岩手県久慈市。

私はこの街に大学1年の時にひとりで行ったことがある。

晩秋の寒い時期だった。

この街を訪れた理由は単純だった。

大学1年の時に交際した彼女にふられ、その彼女の故郷が久慈市だったのだ。

未練が残り、彼女の面影に苦しめられた。

その思いを断ち切るために、彼女の故郷に行くことにした。

彼女は大学にいるので、彼女に会いにいった訳ではない。

岩手県八戸市からローカル線に乗って久慈市に着いた。

海沿いにある小さな街だった。

小高い山に上って海を見ると、沖に小さな島が見えた。

海の青い色が、悲しみに満たされている私の心に沁みた。

私はスケッチブックを取り出すと、その風景を色鉛筆で描いた。

この悲しみを、ずっと残しておきたいという思いがあったからだ。

今から思うと、彼女は私のことが好きになり切れなかったのではないかと思う。

私が告白をして受け入れてくれたが、それは私のことが好きで受け入れてくれた訳ではないように思う。

B子が言うように、好きではないが嫌いではないので、とりあえず付き合ってみようという感じではなかったのか。

もっとも私の気持ちも、今から思うと定かではない。

彼女に惹かれるところは確かにあったが、違和感みたいな感覚もあった。


友人たちから「彼女は、おまえに合っていない」と言われていた。

  自分の気持ちに確信がないまま、私は突っ走っていたのかもしれない。

  大学1年の時のほろ苦い思い出だ。

*********

こう考えると、B子のような考えは、今も昔も変わらないのかもしれない。

できるだけ多くの異性と交際し、自分に合う異性を見つける。

これは理にかなった考え方なのだろう。

みんな青春なんだから、男も女もがんばって告白し、また告白されたら積極的に付き合えばいいのだよ。




2013年12月21日土曜日

心やさしいゼミ生

卒業研究の本文の提出が終わり、次は抄録の提出。

12月17日火曜日の午後。


ゼミ生4年が、のそのそと演習室に集まってきた。

締め切りが迫っているため、今日中に抄録を完成させなければならない。





(↑ 演習室の様子)


抄録の下書きを見ると、あいかわらずデキはよくない。

書式はかなり不十分。

内容も、特にゼミ一番のサボリ屋のA男は悲惨な状況だった。

午後5時30分になっても完成したゼミ生は数人だけ。

私はこれから会議で、戻ってくるのがおそらく午後8時過ぎ。

私は言った。

「俺が戻って来るまで、遊ばずに、皆で協力し合って抄録を仕上げるんだよ。」

まあ、このゼミ生たちのことだから、遊んでしまうだろうと内心思っていた。

午後8時30分過ぎ、やっと会議が終わって演習室に戻ることができた。

待ち構えていたように、ゼミ生たちが抄録を持ってくる。

抄録を見て驚いた。

合格ラインには届かないものの、完成度はかなり上がっている。

悲惨だったA男の抄録も、とてもわかりやすい文章になっている。

「この前書き、誰かに教えてもらったな。」と思わず口にした。

私が会議で不在にしている間、皆で見せ合い、教え合っていたようだった。

午後9時頃、とうとうA男も合格をもらって抄録を完成させた。

A男は、彼女との待ち合わせの時間に1時間半も遅れ、焦っていた。

「メールを送っても返信がない…」

そりゃ、1時間半も待たされたら怒るだろうな。

「こうなったら、仲直りのためにホテルに行って~」とA男。

「わぁ~、リアル~」と女の子たち。

A男はそそくさと帰って行った。


**********

多くのゼミ生が抄録を完成させる中…

B男は取り残されていた。

「俺は遅くなってもいい」

B男はそう思って、私が会議で不在にしている間、皆に抄録を見てもらわず、ひとりで取り組んでいた様子だった。

B男の抄録は、皆と比較すると、かなり完成度が低かった。

「この抄録、誰にも見せてないな。」

私は言った。

書式だけでなく,内容の書き方も他のゼミ生とかなり異なっていた。

他のゼミ生が見ていたら,この書き方が違うことにすぐに気が付くはずだ。

この抄録を修正するには,おそらく1時間半から2時間かかると思った。

深夜12時を過ぎてしまう…

 **********

その時,演習室にはB男を含め,4人のゼミ生が残っていた。

その中でA子だけが,すでに抄録を完成させていた。

しかし、帰らずに演習室に残って,皆の抄録の手伝いをしていたのだった。

私はB男に言った。

「A子に抄録を見てもらえ。」

A子はB男の隣に座ると,抄録を手伝い始めた。

 



 (↑ 手伝っているA子:午後9時45分頃)





私がこっそり聞いていると,A子はかなり具体的に指示をしている。

「この部分はね,~のように書いて。」

B男はそのとおりにパソコンに打ち込む。

しばらくして…

 「抄録ができました。」とB男が言った。

私が抄録を手に取り,読み始めた。

すると…

A子が私のそばに来て,体をぎりぎりに寄せ,膝立ちをした。

両手は腰に当てられ、仁王立ち。

威嚇するオーラが私に降り注ぐ。

 「私とB男が一緒に作った抄録を,いちゃもんつけたら許さないわよ。」という無言の圧力。

「わぁ,A子の雰囲気,怖いよ~」と他の女の子が笑う。


その抄録の完成度は高かった。

わずかの時間に,B男の抄録は変貌を遂げていた。

正直言って,A子の実力に驚いた。

いつの間に,抄録の書き方のポイントを身につけたのだろうか…

数か所の手直しで,B男の抄録は完成した。

午後10時20分だった。










(↑ 研究室の時計)





 **********

痛烈に思ったことがある。

やはり自分ひとりで取り組んでいたら進歩は遅い!

皆と協力し合うことが,ここまで完成度をあげるんだ!

もちろん,このことは以前からわかっていた。

だからこそ笹竹ゼミでは,テーマは異なるものの,皆と一緒に作業する寺子屋方式を取っている。

皆が一緒になると,確かに遊んでしまう危険性はある。

しかし,皆が一緒にいれば,助け合うことだってある。

このゼミ生たち全員が,改めて私に教えてくれたことだ。

*********

 午後11時少し前。

最後まで残ったゼミ生4人と私は演習室を出た。

ゼミ生の車に乗せてもらい,途中でB男をアパートで降ろし,A子とB子と私は大府駅に到着。

名古屋方面の電車が停車している。

A子とB子はあわてて飛び乗った。



ところが…

A子とB子が乗った車両は切り離されており,前方の車両だけが出発。

A子とB子は取り残されてしまった。

「わぁ~,わぁ~,ぎゃぁ~,ぎゃぁ~」

言葉にならない笑い声が,人影が途絶えた大府駅に響く。

二人は,別のホームで次の列車を待つことになった。








 
(↑ 二人の笑い声が大府駅に響いていた)
 




それにしてもA子は心がとても優しい。

ゼミ生を助けてくれてありがとう。

A子に感謝です。