2013年12月26日木曜日

好きではないけど交際します

JR刈谷駅、午後6時20分。

ゼミ3年が顔をそろえる。

皆おしゃれをしている。

 
今から忘年会。

 費用は学園祭の収益金を当てるので、実質1000円の負担ですむ(不足分は私が払うことになっている…)。

 サラリーマンが集う居酒屋で、学生にしてはやや高級な店。

 掘りごたつだったが、テーブルが狭いので、身を寄せ合って座る。

 忘年会が始まった。





酒が進むにつれて、A子がB子に尋ねる。

「彼とどんな風に付き合い始めたの?」

すると…

「告白された時、好きではなかったけど、嫌いではなかったので、付き合うことにした」とB子は言った。

「ええ〜、マジ〜」と私は言った。

好きではないのに交際を始めることは、私には考えられない。

私は疑問に思い、質問を重ねる。

「それって、どいうこと?…」

「男の人に私から告白できないし、せっかく告白されたので、このチャンスを大切にしたいと思って…」

 確かに一理はある。せっかくのチャンスを無駄にしたくはない。


とりあえず付き合ってみて、好きになれなかったら別れるということなのだろう。

でも一度交際を始めてしまうと、よほどのことがない限り、別れを告げることは難しい。

すごく嫌いにならない限り、別れを言い出しにくいのではなかろうか。

だらだらと付き合いが続いてしまうことにはならないのだろうか。

幸い、B子の場合は愛が育まれて、現在も交際を続けている。

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ふと思い出したことがある。

NHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」の舞台となった岩手県久慈市。

私はこの街に大学1年の時にひとりで行ったことがある。

晩秋の寒い時期だった。

この街を訪れた理由は単純だった。

大学1年の時に交際した彼女にふられ、その彼女の故郷が久慈市だったのだ。

未練が残り、彼女の面影に苦しめられた。

その思いを断ち切るために、彼女の故郷に行くことにした。

彼女は大学にいるので、彼女に会いにいった訳ではない。

岩手県八戸市からローカル線に乗って久慈市に着いた。

海沿いにある小さな街だった。

小高い山に上って海を見ると、沖に小さな島が見えた。

海の青い色が、悲しみに満たされている私の心に沁みた。

私はスケッチブックを取り出すと、その風景を色鉛筆で描いた。

この悲しみを、ずっと残しておきたいという思いがあったからだ。

今から思うと、彼女は私のことが好きになり切れなかったのではないかと思う。

私が告白をして受け入れてくれたが、それは私のことが好きで受け入れてくれた訳ではないように思う。

B子が言うように、好きではないが嫌いではないので、とりあえず付き合ってみようという感じではなかったのか。

もっとも私の気持ちも、今から思うと定かではない。

彼女に惹かれるところは確かにあったが、違和感みたいな感覚もあった。


友人たちから「彼女は、おまえに合っていない」と言われていた。

  自分の気持ちに確信がないまま、私は突っ走っていたのかもしれない。

  大学1年の時のほろ苦い思い出だ。

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こう考えると、B子のような考えは、今も昔も変わらないのかもしれない。

できるだけ多くの異性と交際し、自分に合う異性を見つける。

これは理にかなった考え方なのだろう。

みんな青春なんだから、男も女もがんばって告白し、また告白されたら積極的に付き合えばいいのだよ。