2015年8月9日日曜日

お弁当から唐揚げが突然なくなった

今年もまた7月下旬の特別ゼミが行われた。

連日、演習室にこもって、卒業研究の抄録やポスターを作成する。




(今年の特別ゼミの様子。それにしても乱雑な机の上だな。)




それまで卒業研究をなめていたゼミ生たちは、ここで厳しさを思い知るのである。

まず抄録の内容で合格をもらい、次に抄録の書式で合格をもらい、次にポスターの下図で合格をもらう必要がある。

この合格は、簡単にはもらえない。

私から何回もダメ出しをされて、イライラしながらも、必死に耐えてやり直さなければならない。

抄録の書式を確認するときに、よく使うことばがある。

「盲点だな」

ゼミ生たちがなかなか気付かない書式ミスがあると、私はこのように表現する。

するとゼミ生たちは、

「(書式のミスを)教えてくれたっていいじゃん」とぶつぶつ不満を口にする。

私は、ゼミ生たちを諭す。

「卒業研究はたいへんだと思ったけど、社会に出たら仕事はもっとたいへんだったと,
先輩たちはよく言っているよ。」

ちょうどその時、今年卒業したA子からメールが届いた。

そのメールの一部には、こんなことが書かれてあった。



「学生の時、卒論やばいって思ってたのが懐かしい!

卒論とかイージー過ぎる!

やれば、終わるし、仕事に比べたら楽だったなーって最近よく思う(笑)

あの時先生言ってたこと、思い出してメールした(笑)」



よいタイミングだった。

私はこのメールをゼミ生たちに紹介した。

「今、今年卒業したゼミ生からメールが届いてね、その内容は~」

私は、先ほどのメールの文を読んだ。

ゼミ生たちは、きっとこう思うだろう。

「先輩が言うのなら間違いないだろう。やはり卒業研究はたいへんなんだ。」

ところが…

ゼミ生たちの反応は違った。

「先生、卒業生に、このように書いてメールしてくれって頼んだでしょう。やらせは止めてください。」

このゼミ生たちには、卒業研究がたいへんであることを認めたくないようであった。


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ゼミ生たちは、早く合格をもらいたくて焦っていた。

少しでも抄録やポスターの下図を修正すると、私に見せに来る。

私が昼休みにドアに「ランチ中」と張り紙をしてランチを食べていても、ゼミ生たちは強引に部屋に入って来る。

ゆっくりランチも食べていられない。

私にとって、楽しみはランチしかないのに…

そこで私は、ランチ中は居留守をつかうことにした。

研究室のドアの鍵をかければ、ゆっくりランチを食べられる。

ゼミ生たちは、きっと外出中であると思って、あきらめるだろう。

ドアに鍵をかけて、私がゆっくりランチを食べていると…

ゼミ生が数人やってきて、いきなりドアを開けようとした。

鍵がかかっていることがわかると、窓ガラスに顔を付けて、部屋の中をのぞき込む。


そして窓ガラスをドンドン叩いた。

かなり強烈だ。


怖い!

やがてゼミ生たちはあきらめて帰って行った。

ああ、助かった。




(あきらめて帰って行くゼミ生たち)




********

A子が研究室にやってきた。

A子は、卒業研究の発表の時に、特別に画用紙を使うことになっていた。

その画用紙を作るためにやってきたのだ。

その時、夕方近くだったので、私はお腹が空いていた。

私は大学の売店で買ってあったソーセージを食べようと思った。

何気なくソーセージを持って、A子に作り方を教え始めようとした。

「まず、はじめにやることは~」

その瞬間…

A子は私の言葉を途中でさえぎり、

「何、これ?」

と言いながら、ソーセージを奪い取った。

その素早さは、まさに動物的であった。


「……」

私はことばを失った。

私の片手からわずかに見えていたソーセージの一部分に、A子は敏感に反応したのだった。


さらにA子は、私の机の上にあった塩焼きそばのカップ麺も奪い取り、満足の様子であった。



(カップ麺とソーセージをゲットして満足そうなA子)



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特別ゼミは、5日間にわたって行われた。

そのうち4日間は、9時過ぎの帰宅となり、私は夕食を研究室で食べた。

夕食のお弁当は、あらかじめ売店で買っておいた。

唐揚げと半熟の卵がご飯にのっているお弁当をいつも買った。

売店で「どのお弁当が美味しいの?」と見知らぬ学生に聞いたところ、このお弁当を指さしたからである。

確かに、なかなか美味しかった。

ある日の午後6時過ぎ、私は研究室でそのお弁当を食べていた。




(3日間連続して夕食に食べたお弁当)


そこにゼミ生2人が、ポスターの下図を持ってやってきた。

私はお弁当を食べることを中断して、ゼミ生の指導をし始めた。

二人のゼミ生の指導が終わって、お弁当を再び食べようとすると…

お弁当の唐揚げがない!

ご飯の上にのっていた唐揚げがなくなっていたのだ。




(唐揚げをつまみ食いされて、ご飯だけが残っていた)




おそらく私が指導している間にB子がつまみ食いをしたのだ。

B子は、素知らぬ顔をして、研究室を去って行った。

私はおかずがなくなったお弁当のご飯だけを、もくもくと食べたのだった。