2014年12月24日水曜日

大雪のなかの忘年会

大雪警報が出て,大学が全面休講になったその日…

大府駅前でゼミ3年の忘年会が開かれた。

授業がないので,皆,忘年会のためだけに,自宅から集まって来た。

本当はキャンセルしたかったのだが,さすがに当日は無理だった。

この居酒屋は,普段はサラリーマンで賑わう。

学生がこの居酒屋で飲むことはほとんどない。

サラリーマン向けだから、この店の料理は美味しかった。




(ゼミ3年の忘年会)

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忘年会が始まって,私の前に座ったA子が語り始めた。

数ヶ月前に彼に別れを言い渡された。

A子は彼に愛情を持っていたが,別れを受け入れた。

彼は結婚を意識していたが,今のA子はそこまでの意識に至っていなかったからだ。

でも,その後も彼は連絡を取ってきて,現在でも会っている。

まだ愛情を持っているような思わせぶりな態度を彼は示す。

そのたびに,A子は気持がときめき,そして切なくなる。

私のこと,どう思っているの?

私はどうしたらいいの?


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すると,そばで聞いていたB子が言う。

「私も,同じような感じ。思いを寄せる彼がいるけど,はっきりしない関係が続いている。でも先生に相談したら,その関係を続けろって言うの。」

このような恋愛の悩みはけっこう多い。

そして私のアドバイスはいつも同じだ。

「はっきりしない関係を続けること。白黒つける必要はない。」

心惹かれる相手の気持ちを思い,相手のわずかな態度や言葉に,ワクワク,ドキドキすることは,心が煌めく瞬間だ。

とっても繊細で,落ち込んだり,幸せを感じたり,浮き沈みは激しいけれど,美しく輝いている瞬間だと思う。

交際していないだけに,純粋な愛が経験される。

でも…

交際が始まると,俗的な悩みが出てくる。

彼は浮気をしていないか…

長男だけど結婚はうまくいくか…

そしてマンネリ化してきて,刺激が乏しくなってくる。

こんな持論をゼミ生相手に話をする。

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するとC子が反論する。

「私,マンネリ化しているかもしれないけど,でも彼と一緒にいると,心が落ち着くんです…」

C子は年上の彼と交際している。

数ヶ月前に彼と別れたが,彼に精神的に依存していることを自覚して,交際を復活させている。


たしかに,女の子はこのような場合がある。

交際する彼ができると,心が落ち着くのだ。

でもワクワク感はないが,おそらく,それはマンネリ化とは言わない。

マンネリ化とは,心が落ち着きすぎて,むしろ退屈で,話題がなくなる状態のことだ。

彼にあれこれと話すことが一杯あり,それを話すことで心が落ち着くのであれば,ワクワク感がなくてもいいと思う。

でも,私の年齢になると,やはりドキドキする切ない恋がとても貴重に思える。

それは,青春時代にしか体験できないからだ。

だから,無理して,交際に持ち込むことはない。

ドキドキする切ない恋を大切にしてほしいと思う。

2014年12月23日火曜日

葬られた先生

今年も卒業研究の提出する日がやってきた。

私は,朝から夕方まで,学科のすべての学生の卒業研究の書式をチェックする。

大変な作業であることは自他共に認めるところだ。

単に書式のミスを指摘するだけでは,学生の怒りをかってしまう。

なぜこの書き方がミスなのかを,納得するように説明する必要がある。

さらにミスの指摘のしかたもむずかしい。

単純なミスであっても,ミスはミスとして指摘しないと公平さは維持できない。

わずかなミスである場合は,心苦しいときもある。

しかし,楽しい一面もある。

ゼミによって雰囲気はかなり違う。

書式ミスがなく卒業研究が受理されると,ガッツポーズが出て,ゼミ全員から拍手をもらい,盛り上がるゼミもある。

そうかと思えば,淡々と卒業研究を提出してくるゼミもある。

また私の前に座ると,まるで仏様を拝むかのように,両手を合わせて「どうか合格しますように」とぶつぶつ言う学生もいる。

あるいは「先生,寒くないですか。エアコンの温度を上げましょうか」などと,妙に気をつかってくる学生もいる。

なかなか楽しい。

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笹竹ゼミでは,書式ミスは自分で見つけるように指導している。

手をかけすぎると,学生は甘えてしまって,自分で書式ミスを見つけようとしないからだ。

いよいよ卒業研究の提出の当日。

本文では,ゼミ生4人に書式ミスがあり,再提出となった。

抄録では,ゼミ生6人に書式ミスがあり,再提出となった。

再提出になった学生は、むすっとした表情で演習室に戻り、訂正することになる。

演習室のホワイトボードには、こんな落書きがあった。

私がゼミの時間に、もっとしっかりと書式ミスを確認してほしいという気持が表現されていた。


(書式ミスをもっとしっかり確認すべきという意味の落書き)



特に抄録の再提出となると,先着順になるため長い行列ができ,提出まで約2時間待ちとなる。

事情を知らない3年生以下の学生は、この長い行列に驚いていた。




(再提出を待っているゼミ生たち)


再提出の受付が始まった。

私は片手に定規を持って、学生たちの本文や抄録をチェックする。

私がこの定規を使って余白を測定したり、行数を数え始めると、学生たちは緊張するという。



(再提出の受付風景。私の右手には定規がある。前に座っているのはゼミ生たち)


ゼミ生の再提出を受け付けるとき,その様子を私がビデオカメラで撮影しようとすると…

「こんなところ撮らないで,早く見てください」とゼミ生は言った。




(「こんなところ撮らないで、早く見てください」というゼミ生)



午後6時過ぎ。

すべての作業が終わった。

ゼミ生たちはすでに帰って,演習室には誰も残っていなかった。

鍵を閉めようと,演習室に入ってみたところ…

ホワイトボードには落書きがしてあった。

お寺の絵が描かれ,その横にお札が描いてあった。

再提出となったゼミ生が怒って書いたのだろう。

私を葬ろうとしている。



(ホワイトボードに描かれたお寺の絵)



(なんと御札まで作られていた)


「ほう,なかなかおもしろいじゃあないか」

私に対する怒りを,このように表現するとはユニークだと感心した。

さっそく私は写真に撮った。


後日,ゼミの時間に、ゼミ3年生たちはこの絵を見た。

しかし,この絵が描かれた背景がわからず,「気味が悪い絵」と言っただけで,何の関心も示さなかった。



渋谷のイタリアンの居酒屋にて

東京渋谷。

JR渋谷駅から徒歩5分のところに,その店はあった。

本通りから1本外れた裏通りのため,比較的落ち着いた通りである。

午後5時。

開店を待って,その店のドアを開けた。

客はまったくおらず,カウンターの向こうに店員2人がいた。

若い店員が私を見て微笑んだ。

今年卒業したゼミ生のA男だった。

渋谷でイタリアンの居酒屋の店長をしていると人づてに聞いて,訪ねたのだった。



(店内にて A男)


A男は,大学時代から,将来は自分の店を持ちたいと夢を語っていた。

就職活動では,迷わず東京の飲食関係の会社を選んだ。

まじめに働いているらしく,渋谷の店は2店舗目であり,店長を任されている。


隅の席に座って,A男のおすすめの生ハムとビールを注文する。

A男の雰囲気は,まだそれほど変わっていない。

ただ少し太ったかな。

仕事はなかなかハードなようだった。

深夜に帰宅し,昼過ぎに出勤。通勤に約1時間かかる。

それでも「楽しいから,それほど疲れませんよ」とA男は言う。




(カウンター内で働くA男)


もう一人の店員は,ゼネラルマネージャーで,A男の上司というので,席を立って挨拶に行く。

「厳しく指導してやってください。A男は,気が乗らないと,だらだらしますから」

大学時代,卒業研究をやる気がしないとだらだらし,締め切りに間近になって,他のゼミ生に助けてもらって何とか提出にこぎ着けたという前科があった。

「卒業研究は地獄でした。本当にきつかった。でも今から思うと,卒業研究をやってよかったと思っています。」

A男は神妙な顔をして言った。

卒業研究によって,世の中の厳しさを多少知ったのだろう。

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お腹が空いていたので,スパゲティを注文する。

カウンターの向こうで,なにやらA男が調理を始めた。

けっこう時間がたってA男がスパゲティを運んできた。

「自分が作ったスパゲティは,上司はまだまだダメだと言うんですが…」

食べてみて,確かに今ひとつだった。

「麺はもっと堅めがいいな。スープが残りすぎだな。」

私は遠慮なく言った。

A男はプロなのだから,客としての意見をはっきり言わないといけないと思った。



(A男のつくったスパゲティ)


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「彼女はいないの?」

私が突然切り出すと,

「いませんよ。」との返事。

「前の彼女とは,よく続いたな。もっと早く別れると思っていたが」

「でも…ガチで好きだったんですよ…~」

A男の胸の内を語ってくれた。


その後,カウンター内で働き始めたバイトの女の子を見ながら,

「あのバイトの女の子,かわいいし,とっても気がつくし,いい女の子ですよ。でも彼がいるんですが…」

とA男は残念そうな顔で言った。

仕事を一生懸命やっているだけに,心を癒やしくれる彼女がほしいのだろうと思った。

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帰り際,A男は「美味しそうなリンゴがあるので,持って行ってください。」と言って,リンゴを1個渡してきた。

大きくて美味しそうなリンゴだった。

A男の気持が詰まったリンゴに思えた。




(二人で記念撮影をした)


店から出ると,外はすでに真っ暗になっていた。

店の看板に明かりが灯っていた。




この店が繁盛し,いつかA男の店が持てることを祈って,渋谷駅に向かった。

先生に仕返し

熱気ある演習室。

皆黙々と卒業研究に取り組んでいる。





(今年のゼミ4年の卒業研究の様子)

今年の4年生は優秀な学生が多い。

それでも皆卒業研究に苦しんでいる。

ゼミ生の提出してきた本文を読んで,私が評価する。

私がなかなか合格を出さないので,皆イライラしている。

おまけに私が授業や会議に出席するために不在になることが多く,指導を受けられないので皆困っている。


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ゼミのある日,5限に精神保健の授業があった。

私が授業に行っている間,指導を受けることができない。

そのためゼミ生たちは,授業を休講にしてほしいという。

そんなことはできない。

それなら,早く授業を終わって戻ってきて欲しいと言う。

そんなこともできない。

授業に出てみると,この授業を受講しているゼミ4年生が一番前の席に座っていた。

なんと「授業を早く終われ」という紙を机に貼っている。





(教室の一番前に座っているゼミ生)


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ある日…

私が会議で研究室を留守にしたことがあった。

その時,研究室にはA子,B子,C子がいた。

そして,私の悪い予感は当たった。

会議が終わって戻ってきてみると,隠してあったビスケットとチョコパイの袋がテーブルの上にあった。



(隠してあった大切なお菓子が…)



それを、ゼミ生たちは美味しそうに食べていた。

「俺のお菓子が…」

「いいえ,違います。私たちが買ってきたお菓子です」(キッパリ)

「実は,お菓子の袋に密かに印を付けてあるんだ」と私がデタラメを言うと…

A子は袋を手に取って探し始めた。

「やっぱり,俺のお菓子じゃあないか」



ゼミ生たちは,すなおに認めたものの,こう言った。

「先生のパンとポタージュの素を、この部屋のどこかに隠したので,探してごらん」

この発言にはある意味が隠されていた。


卒業研究の書式ミスがあっても,私はそれを具体的に指摘せず,「どこにあるか,探してごらん。」と言っていた。

ゼミ生たちが「わからないので,教えてください」と言うと,

「中学生でもわかるミスだ」と突っぱねていた。





(ホワイトボードのゼミ生の落書き)



ゼミ生たちは,ミスを探す作業にイライラしていた。

この仕返しをしようとしているのだ。

書式ミスを探し出すことがたいへんなので,私に探し出す苦労を味合わせようとしているのだ。

私がパンと
ポタージュの素を探している様子をゼミ生たちは面白がって,スマホで写真に撮っていた。



(この穴の中にパンが隠されてあった。)




(本の間にポタージュの箱が…)



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こんな調子で,ゼミ生たちは卒業研究に取り組んでいた。

大学の最終バスに乗れなかったことは,何回もあった。

D子は,他のゼミの学生に捕まり,パソコン室で書式を整える作業に付き合わされていた。

午後10時になってやっとD子は研究室に戻ってきた。

疲れた顔をしている。

「先生,私たちをタクシーで駅まで送るか,ピザまんをおごるか,どちらがいいですか。」

D子は無情な要求を突きつけてきた。

つい,かわいそうになって「うーん,ピザまんかな」と私が口にする。

ゼミ生3人と一緒に,共和駅まで歩き,その途中のコンビニでピザまんを買うつもりであった。

しかし列車の発車時刻が迫っていたので,時間的余裕はなく,ピザまんを買うことはできなかった。

皆疲れた顔つきで,電車に乗り込んだ。





(大府駅にて 午後10時30分頃)


卒業研究は、やっぱり今年もたいへんだった。







2014年11月9日日曜日

100円アイスで許してあげる

今春卒業したゼミ生のA子からメールが届いた。

「かわいい子を連れてゼミ室に行きます。」


かわいい子って、誰だろう?


私は楽しみにその日を待っていた。


やがてA子が「かわいい子」を連れて研究室にやって来た。


「かわいい子」は、今春卒業した同級生のB子だった。


B子は、朗らかで、心が優しく、皆の卒業研究を手伝ってくれて、私は感謝していた。


卒業して半年以上が経過し、B子は少し大人の女の雰囲気を漂わせていた。


A子とB子と私の3人で、「あのゼミ生は今」という感じで、ゼミ生たちの近況報告の話をした。





(↑ 今春卒業したA子とB子)


B子「○○と○○は別れたんですよ。○○はひどい奴でしょ。」


私 「まあ、予想されたことだけどね。」


B子「○○を叱ってやってください。いけない恋いをしている。」


私 「メリットがなくなったら、そのうち別れるさ。」


こんな感じで、卒業しても恋の話が中心だ。



B子に仕事のことを尋ねたら、先輩たちに恵まれて楽しくやっているという。


もっとも、泣きながら社長に不満を言ったこともあったらしいが…


今春卒業したゼミ生のなかには、すでに転職した者もいる。


A子のように、ディズニーランドで夢を追い続ける場合もあるが、正社員になれずに転職したゼミ生もいる。


厳しい社会のなかで、たくましく生きていって欲しいと、ゼミ生の顔を思い浮かべて祈った。


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その翌々週、ゼミの写真を撮る日がやってきた。


カメラマンがやってきて、ゼミの集合写真やゼミの様子を撮るのだ。


この写真は、大学全体の卒業アルバムに載ることになる。


ゼミ4年生たちは、ちゃんとお化粧をし、それなりの服装をしている。



私も自分のデジカメで気ままにゼミ生の写真を撮った。


遊びのつもりで、あるゼミ生たちに向けてシャッターを切った。


そしてモニターを見て、驚いた。


ゼミ生たちの表情が生き生きとしていて、若さの息吹をリアルに感じた。


なんて表情が美しいのだろう!






(↑なんて美しい写真なんだろう。青春の一コマだ。)



そのさわやかさ、清らかさ。


青春の一コマという感じがする。


でも…少し悲しくなった。


卒業後には、厳しい社会が待っている


ゼミの卒業生たちが、卒業後に研究室を訪ねて、口にする過酷な労働環境。


ゼミ生たちは、まだその厳しさを知らない。


ゼミ生たちは、そんなことを露ほども思わず、のんきに「卒業研究なんて、面倒くさい。早く終わらせたい。」などと言っている。


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卒業研究のゼミは、木曜日の2限から4限までだ。





(↑ 今年はこんな感じで卒業研究に取り組んでいる。)


先日、社会見学や会議が入ったため、木曜日の2限と3限に私がゼミに行けなくなった。


私は会議中に、あわててゼミ生のC子にメールを送った。





(↑ C子にメールを送信した)


急に会議が入った。戻るのが遅れる。皆に伝えて。

しばらくして、C子から返信があった。

みんな 許さない。だそうです。

私からのメールをC子が皆に伝えたところ、皆が口々に「許さない」と言ったのだろう。

やはり、ゼミ生たちは怒っているのか…

無理もない、卒業研究の提出まで後1ヶ月しかないもんな…

私は多少あせって、何とかゼミ生たちの怒りを静めようと考えた。

このような場合は、低姿勢な態度を取るのが原則だ。

カウンセリング的に言えば、相手の気持ちに理解を示すことが重要だ。

私はつねづねカウンセリングの授業でそう教えている。

だから、「気持はわかる」などという表現を入れればよいだろう。

さらに、ゼミ生たちをほめて、気分良くさせることも大切だ。

教員がいなくても、皆はできるなどとおだてればよいだろう。

私はこのように考えて、C子に次のような返信をした。

気持ちはよくわかる。皆意欲さえ出せばしっかり出来るので、頑張ってごらん。と伝えてね。

このような返信をしておけばば安心だ。

ゼミ生たちは、機嫌を直して、おとなしく卒業研究に取り組むだろう。

しばらくして、C子から再度返信があった。

ん…、まだ何かあるのかな。

私は疑問に思いながらC子からのメールを開いた。

アイス買って早く帰ってきてごらん。だそうです。

な、なんとアイスを要求してきたのだ。

恐るべきゼミ生たち。

カウンセリングの理論が通用しない。

私の作戦が読まれている。

仕方がない…アイスぐらいは我慢しよう。

できるだけ被害を最小限にしようとメールを返信した。

昨日〇〇先生たちと飲んだので、あまり金がない。だから100円アイスだな。

そしてC子から返信があった。

まあ100円でもいいでしょう。だそうです。

アイスを買ってもらうことは当然という感じだ。

どこまでも強気なゼミ生たちであった。

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売店に行き、カゴにアイスを詰め込もうとした。

ところが、いろいろな値段のアイスがある。

値段の高いアイスを買わないように、商品を手にとって、店員さんに確認する。

「このアイス、いくらですか。こっちのアイスは?」

アイスの値段を必死で確認する自分が、少し恥ずかしかった。


2014年11月2日日曜日

学園祭の後は浮気のデート

平成26年の学園祭は、2日間ともさわやかな秋晴れだった。

雲ひとつない空。

すがすがしい空気。


(毎年、「笹やき」の模擬店を出している。)



ただ残念だったことは、ゼミ4年生が模擬店に出店しなかったこと。

検便を保健所に提出することができなくて、直前にキャンセル。

学園祭のパンフレットには記載してあるのに、模擬店は実在しないという状況。

もっとも4年生は、模擬店を出さなくてすむので、大喜びだった。

4年生には困ったもんだ。


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ゼミ3年生の出店した模擬店の「ささ焼き」は、けっこう売れた。

今年は、和風ネギポン酢を出した。

なかなかの人気商品だった。

学園祭の模擬店が、以前に比較してかなり減少しているためか、お客さんがよく来る。

なんと行列ができている。


(行例ができ、予約を受け付けているところ)


そのうち調理が追いつかず、品切れとなってしまった。

予約を受け付けたところ、予約が殺到し、なんと40分待たないと手に入らない状況。

開店休業状態だった。

2日目は、ゼミ生がたこ焼き器を持ち寄り、計6台で調理した。

それでも注文に追いつかない。

皆、休憩なく、ずーと、ずーと、焼き続けた。

生地を流し込んで、固まってくる数分だけが、ほっとする一刻。

「もう、焼きたくない!」と言い出すゼミ生もいた。


(皆、一生懸命、焼いていた)


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疲れている皆のなかで、ひとり元気のよいA子がいた。

私が研究室にいても、演習室にいるA子の笑い声が響いてくる。

「ぎゃはははは…」

私が演習室をのぞきに行くと、A子は忙しいそうに働いている。

座っていると効率がよくないと、立ったまま生地を作っている。

手もよく動いているが、口もよく動いているA子であった。

私がのんきに演習室に顔を出すと、

A子「先生、これやって。」

私「え~、俺、やるの~」

A子「じゃあ、浄水器に水入れてきて!」

しかたなく、私はA子に言われるまま、水を汲んで来ることになった。

A子が、なぜこんなにも元気なのかは、後でわかることになる。

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2日間のささ焼きの純利益は8万5千円以上。

これまでで最高だった。

皆が一生懸命がんばったからだ。

皆、かなり疲れていた顔をしていたけど…

もっとも、利益よりも、皆が力を合わせるという体験が、一番の収穫だと思う。

ゼミ3年生は、皆仲がよく、チームワークがとてもいいから、こんなに利益が出たんだよ。

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学園祭が終わって…

A子とB子が帰らずに残っている。

A子が研究室で着替えをしたいと言う。

そのため、私は研究室の外で待っていた。

しばらくして研究室を覗いてみると…

A子は一生懸命、お化粧をしていた。

そして、す、すごい臭い!

私「A子、香水をつけたの?」

A子「違います。防臭剤です。ささ焼きの臭いが付いてしまって…」

臭いを消すために、バンバン防臭剤を付けたらしい。

私「ところで、どこに行くの?」

A子「飲みに行くのです。名駅と金山とどちらがいいと思いますか?」

よくよく聞いてみると、A子は知り合った男と二人で飲みに行くという。

A子には、交際している男がいるはずなのに…

私「それ、浮気じゃあないの?」

A子「浮気ではありません!」(きっぱり)

A子は、その男性と付き合うつもりはないらしい。

ただ、現在交際している彼には刺激がなくなったため、刺激を求めて親しい男性と二人で飲みに行くらしい。

A子は浮気ではないと強調しつつも、「彼と会わないかなあ」と心配もしている。

なんだ、やっぱり浮気じゃあないか。

でも、恋愛には刺激が必要なことも事実だ。

大学生のうちから、夫婦みたいな交際をすることは、個人的には反対だ。

夫婦みたいな交際をすると、マンネリ化しやすい。

ワクワク、ドキドキ、そして切なさがないのは、恋愛ではない。

恋愛は、人を生き生きとさせる。

だから、皆疲れているのに、A子だけが、楽しそうにささ焼きを作りまくっていたんだね。

彼に見つかって、浮気がばれないように…




2014年10月25日土曜日

夢を追いかけて

激しく研究室のドアがノックされる。

かなり強烈だ。

やがてドアが開いて、懐かしい顔がのぞく。

今春卒業したA子とB子だ。

A子が卒業後に研究室を訪ねてくるのは、初めてだ。

A子は、卒業後、私に何回も「会いたい」というメールを送ってきた。

仕事について悩み、私に話をしたかったようだった。

しかしA子はまだ新入社員のため自由に仕事を休めず、研究室に来ることはできなかった。

今日のA子はニコニコしている。

私はすぐにA子にたずねた。

「仕事はどう?」

「1月に退職し、ディズニーに卒業研究の続きをやりに行きます。」(笑)

A子は大のディズニー好きで、大学時代には年間パスポートを持って通っていた。

卒業研究も、ディズニーに関連した内容だった。

卒業後、大手企業に就職できたものの、夢をあきらめきれず、ディズニーで働く気持を持っていた。

A子はさらさらと語っていたが、家族と激しいバトルがあったこともほのめかしていた。

夢を追いかけるのは、若いときにしかできない。

A子がずっと願っていたことなので、自分の気持ちを尊重し、ディズニーでがんばったらよいと思う。

********

「先生、アルバムどこにある?」

B子は、大学時代のアルバムを見たがった。

ゼミの卒業アルバムを渡すと、二人で見ていた。



(なつかしそうにゼミテキストとゼミアルバムを見ていた)


アルバムの最後に、ゼミのブログの文章が載っていた。

B子 「私のお母さん、このゼミのブログを読んで、涙を流したんだよ。」

私は驚いて言った。

私 「えー、どうして、このブログで泣くの?」

B子 「私の教育実習の話を読んだときにね。」

ブログには、教育実習で、厳しかった指導教員が最後にB子をほめ、思わずB子が生徒の前で涙を流したことが書かれてあった。

B子 「おかあさんが先生のこと、言っていたよ。」

私 「俺のこと、なんて言っていた?」

B子 「いい先生だねって。

これは、いい話だ。

今のゼミ3年生と4年生にも、この話をじっくり聞かせないといかん。



これらか二人はショッピングに行くという。

心がモヤモヤしているので、ショッピングで憂さ晴らしをするらしい。

私にお土産を置いて、研究室を出て行った。


(A子とB子のお土産)



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翌日、ゼミ4年生のC子が研究室にやってきた。

卒業研究をやりに来たのだ。

C子は、9月に彼氏ができて、ルンルンだ。

頭の中は、どうも彼氏のことで一杯なようだ。

たとえば研究室のティッシュの箱には、彼の名前を書いてしまう。


(ティッシュの箱に彼の名前を書いて貼ってあった)



研究室のテーブルにも、こんなふうに書いて、テープでとめてしまう。


(研究室のテーブルにテープで留めてあった)


「先生、絶対にこれをはがさないでね。」

まあ、恋する乙女なので、しかたがない。

しばらくは、C子の恋心につきあうことにしよう。

**********

その翌日、ゼミ4年生のD子が研究室にやってきた。

D子「先生、お昼ご飯を買うお金がないの。この部屋に食べる物ある?」

私「食べる物はないな。」

D子「先生は嘘つきだから、信用できないわ。」

D子はそう言って、研究室を探し始めた。

私が書棚の下に隠しておいたカップラーメンを見つけ出した。

D子「やっぱりね。見つけたわ。」

D子はお湯を沸かして、カップラーメンを食べ始めた。



(カップラーメンを食べるD子)


D子には心配事があった。

卒業後に今の彼と遠距離恋愛になるのだ。

「彼は、遠距離でも頑張るって言っているけど…」

こんな時の私のアドバイスは決まっている。

遠距離が問題ではなくて、どの程度会えるかが問題だ。

たとえ遠距離であっても、月に何回か会えれば、関係は維持される。

逆に、近隣に住んでいても、あまり会えなければ関係は破綻になってしまう。

二人の引きつけ合う力が強ければ、遠距離恋愛であっても、続くと思う。

ルンルンのC子とは対照的に、心配な様子のD子であった。










2014年9月25日木曜日

真夜中の乱闘事件

秋晴れの空の向こうに、きっくりと山々が見える。

さわやかな多治見の朝。

いつもの産業文化センター。

久しぶりのゼミ4年生の面々がそろった。

これからゼミ4年生の合宿が始まる。

卒業研究の中間発表の練習をするのだ。

********

合宿が始まるなり、A子が私に言った。

「私、先生とおだやかな関係になりたいの」

「……どういうこと?」

「抄録を作成した時のようにはなりたくないの」

A子は抄録の書式のミスで、私にさんざダメ出しを食らっていた。

そのため怒って「先生のこと、本当に嫌いになっちゃうから」と言っていた。

A子はその出来事を言っているらしかった。

もっとも私はA子と「おだやかな関係ではなくなった」などとは、まったく感じていなかった。

いつでも、どこでもA子とは普通の関係なんだけどな。





(↑ おだやかな関係になりたいと言ったA子)



********

発表練習をひとりひとり時間をかけて指導する。

合宿でないと、こんなに丁寧に指導はできない。

B子を指導している時だった。

私 「もっと元気を出して、オーラが足りない。」

B子 「そんなに元気を出したら、私の魅力がなくなってしまう」

私 「……」

B子は、弱々しい雰囲気を出して、男に守ってあげたい感情を引き起こさせたいと考えているようだった。

気持はわかるが、卒業研究の発表会の時まで、男に魅力を感じさせなくても…。

ふだんに十分魅力を感じさせればいいんだよ。



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ゼミ16期生は、皆優秀で、卒業研究の発表練習の仕上がりは早かった。

グループに分かれて練習をしたため、グループ内でかなりサポートしたようだった。

発表が苦手な学生も、他のゼミ生に助けられて(尻を叩かれて)、なんとか上手に発表できるようになった。





(↑ グループ内で発表練習する様子。疲れて寝ているゼミ生もいるが…)



ただ3人のゼミ生は、発表練習をしていくなかで、発表とポスターの図柄が一致していないことがわかり、ポスターをやり直すことになってしまった。


夜、12時を過ぎた頃…




(↑ 深夜のログハウス)


突然、誕生日パーティーが始まった。

ちょうど合宿中にC子の誕生日が当たってしまったのだ

C子に秘密にして、他のゼミ生がケーキを作った。

それをサプライズにして、深夜12時になった瞬間に、C子にプレゼントしたのだった。






(↑ 誕生日パーティ。ケーキを持っているのがC子)


合宿の2日目、深夜1時のことだった。

私は疲れてしまい、もう指導は打ち切りと宣言した。

そして布団を敷いて寝ようとした。

するとD子が言った。

「先生、私のポスターの下図を印刷してください。」

D子は卒業研究の取り組みが遅れていて、9月の中間発表会では発表できず、10月の特別発表会で発表することが決まっていた。

皆がポスターを広げて発表練習をする中、まだポスターの下図を作っていた。

皆とほとんど話をせず、ひとり黙々とパソコンに向かっていたのだった。

「もう眠たいので、明日プリントアウトしてあげるよ。」

私がそう言うと、D子は怒りだした。

「プリントアウトする方が早く寝られることを、思い知らせてやる!」

D子はそう言うと、私が片付けた小型プリンタを持ち出して、畳の上に投げつけた。

小型プリンタの電池カバーが外れた。

そして私の布団からシーツをはがすなど、暴れ始めた。

ふだんとてもおとなしいD子が暴れ始めたので、とても不気味だった。

私は怖くなって2階に逃げた。

「D子がキレた!」

私が状況を話すと、B子やC子は面白がって、目をきらきらさせながら聞いていた。

E子が心配して言った。

「先生、私たちの部屋で寝ていいですよ。私たちは気にしないですから。」

確かに、一人で寝たくはなかった。

夜中にD子に何をされるかわからない不安があった。

しかし、さすがに女子学生と同じ部屋に寝るわけにはいかない。

すると、下の階から、ドスン、ドスンという音が響いてきた。

D子はいったい何をしているのだろうか。

私はびくびくして、他のゼミ生は面白がって、しばらくじっとしていた。

音がやんだので、E子が様子を見に1階に降りていった。

そして、戻ってきて私に言った。

「D子さんが、先生はもう寝ていいですと言っていますよ。」

顔つきも落ち着いているという。

そこで私はそっと1階に降りていった。

B子やC子は興味津々で、一緒に1階に降りてきた。

私の部屋をのぞくと…

部屋の状況にびっくりした。

西側のカーテンの半分が取り外され、外が丸見えになっている。

南側のカーテンは開けられて、縛られている。

布団はぐちゃぐちゃ、シーツがまるで紐のように、結ばれている。


いったいD子は何をしていたのだろうかー





(↑ 私のふとんはぐちゃぐちゃ、枕カバーもはずされ…)







(↑ 私のシーツは、何回も結ばれていた…)




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ふだんおとなしいD子が、なぜ突然キレたのだろうか。

よくよく考えると、D子なりのさびしさや孤独感があったのではないかと思う。

皆がポスターの発表練習に取り組んでいるのに、自分一人だけ取り残され、別の作業をしている。

皆と話すこともなかった。

「先生は、ポスターの発表練習にばかり指導していて、あまり自分を指導してくれない。」と思っていたのではなかろうか。

そして、その不満が爆発したのではなかろうか。

D子に悪いことをしてしまった…


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翌朝…

当番のゼミ生が、腕を振るって朝食を作った。

おしゃれなカフェのモーニング風。

限られた食材を工夫して盛りつけた。

なかなかおしゃれだ。

パンは、クロワッサンとレーズンパン。

フルーツは、巨峰とバナナ。

そしてカップにはヨーグルトにナッツのトッピング。






(↑ ゼミ生のつくった朝食)


朝食の後も産業文化センターで発表練習。

まあまあ、仕上がりは順調。

皆よくがんばった夏合宿でした。

それにしても、真夜中の乱闘事件はびっくりしたなあ…