2014年11月9日日曜日

100円アイスで許してあげる

今春卒業したゼミ生のA子からメールが届いた。

「かわいい子を連れてゼミ室に行きます。」


かわいい子って、誰だろう?


私は楽しみにその日を待っていた。


やがてA子が「かわいい子」を連れて研究室にやって来た。


「かわいい子」は、今春卒業した同級生のB子だった。


B子は、朗らかで、心が優しく、皆の卒業研究を手伝ってくれて、私は感謝していた。


卒業して半年以上が経過し、B子は少し大人の女の雰囲気を漂わせていた。


A子とB子と私の3人で、「あのゼミ生は今」という感じで、ゼミ生たちの近況報告の話をした。





(↑ 今春卒業したA子とB子)


B子「○○と○○は別れたんですよ。○○はひどい奴でしょ。」


私 「まあ、予想されたことだけどね。」


B子「○○を叱ってやってください。いけない恋いをしている。」


私 「メリットがなくなったら、そのうち別れるさ。」


こんな感じで、卒業しても恋の話が中心だ。



B子に仕事のことを尋ねたら、先輩たちに恵まれて楽しくやっているという。


もっとも、泣きながら社長に不満を言ったこともあったらしいが…


今春卒業したゼミ生のなかには、すでに転職した者もいる。


A子のように、ディズニーランドで夢を追い続ける場合もあるが、正社員になれずに転職したゼミ生もいる。


厳しい社会のなかで、たくましく生きていって欲しいと、ゼミ生の顔を思い浮かべて祈った。


************


その翌々週、ゼミの写真を撮る日がやってきた。


カメラマンがやってきて、ゼミの集合写真やゼミの様子を撮るのだ。


この写真は、大学全体の卒業アルバムに載ることになる。


ゼミ4年生たちは、ちゃんとお化粧をし、それなりの服装をしている。



私も自分のデジカメで気ままにゼミ生の写真を撮った。


遊びのつもりで、あるゼミ生たちに向けてシャッターを切った。


そしてモニターを見て、驚いた。


ゼミ生たちの表情が生き生きとしていて、若さの息吹をリアルに感じた。


なんて表情が美しいのだろう!






(↑なんて美しい写真なんだろう。青春の一コマだ。)



そのさわやかさ、清らかさ。


青春の一コマという感じがする。


でも…少し悲しくなった。


卒業後には、厳しい社会が待っている


ゼミの卒業生たちが、卒業後に研究室を訪ねて、口にする過酷な労働環境。


ゼミ生たちは、まだその厳しさを知らない。


ゼミ生たちは、そんなことを露ほども思わず、のんきに「卒業研究なんて、面倒くさい。早く終わらせたい。」などと言っている。


*************


卒業研究のゼミは、木曜日の2限から4限までだ。





(↑ 今年はこんな感じで卒業研究に取り組んでいる。)


先日、社会見学や会議が入ったため、木曜日の2限と3限に私がゼミに行けなくなった。


私は会議中に、あわててゼミ生のC子にメールを送った。





(↑ C子にメールを送信した)


急に会議が入った。戻るのが遅れる。皆に伝えて。

しばらくして、C子から返信があった。

みんな 許さない。だそうです。

私からのメールをC子が皆に伝えたところ、皆が口々に「許さない」と言ったのだろう。

やはり、ゼミ生たちは怒っているのか…

無理もない、卒業研究の提出まで後1ヶ月しかないもんな…

私は多少あせって、何とかゼミ生たちの怒りを静めようと考えた。

このような場合は、低姿勢な態度を取るのが原則だ。

カウンセリング的に言えば、相手の気持ちに理解を示すことが重要だ。

私はつねづねカウンセリングの授業でそう教えている。

だから、「気持はわかる」などという表現を入れればよいだろう。

さらに、ゼミ生たちをほめて、気分良くさせることも大切だ。

教員がいなくても、皆はできるなどとおだてればよいだろう。

私はこのように考えて、C子に次のような返信をした。

気持ちはよくわかる。皆意欲さえ出せばしっかり出来るので、頑張ってごらん。と伝えてね。

このような返信をしておけばば安心だ。

ゼミ生たちは、機嫌を直して、おとなしく卒業研究に取り組むだろう。

しばらくして、C子から再度返信があった。

ん…、まだ何かあるのかな。

私は疑問に思いながらC子からのメールを開いた。

アイス買って早く帰ってきてごらん。だそうです。

な、なんとアイスを要求してきたのだ。

恐るべきゼミ生たち。

カウンセリングの理論が通用しない。

私の作戦が読まれている。

仕方がない…アイスぐらいは我慢しよう。

できるだけ被害を最小限にしようとメールを返信した。

昨日〇〇先生たちと飲んだので、あまり金がない。だから100円アイスだな。

そしてC子から返信があった。

まあ100円でもいいでしょう。だそうです。

アイスを買ってもらうことは当然という感じだ。

どこまでも強気なゼミ生たちであった。

**********

売店に行き、カゴにアイスを詰め込もうとした。

ところが、いろいろな値段のアイスがある。

値段の高いアイスを買わないように、商品を手にとって、店員さんに確認する。

「このアイス、いくらですか。こっちのアイスは?」

アイスの値段を必死で確認する自分が、少し恥ずかしかった。