ゼミ4年生にとっては、最後の大舞台。
苦しかった卒業研究からやっと解放される!
そして…ゼミ活動も終わる。
苦しみからの解放、そして寂しさが同時に訪れる。
それが卒業研究発表会。
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卒業研究発表会が始まった。
皆、緊張している。
そのためか、いつもより引き締まったいい顔をしている。
卒業が危ぶまれたゼミ生もいたが、なんとか無事全員が発表できた。
一番心配したA男も、これまで一番良い発表をした。
ただ立ち位置が最後まで間違っていたが…
(↑ 立ち位置で失敗したが、発表はよかったA男)
合宿中に、皆が寝静まった後も練習をしていたB子も、上手に発表していた。
発表会の最後、先生方の講評がある。
私がゼミ生に向かって言った。
「卒業研究、苦しんだけど、皆よく頑張りました。」
後から聞いた話だが、この私の言葉を聞いて、目を潤ませたゼミ生がいた。
よほど卒業研究に苦しんだのだろう。
卒業研究には、たぶん、ひとりひとりに苦しみのドラマがある。
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卒業研究発表会が終わった午後6時。
ゼミの打ち上げコンパが行われた。
(↑ ゼミの打ち上げコンパの乾杯)
最後のコンパらしく、突っ込んだ話が飛び出す。
「ゼミが始まったころ、皆に劣等感を感じていて、ゼミに行くのが嫌だった」
あるいは、あるゼミ生に向かって、
「彼女とうまくいかずに悩んでいた時、もっと心を開いて話してほしかった。あっ、先生、ここビデオ撮るところじゃあないから。」
と言うゼミ生もいた。
(↑ 「あっ、先生、ここビデオ撮るところじゃあないから」というゼミ生)
しばらくすると…
隣に座ったC子が私に言った。
C子 「先生、ゼミ内では、男女交際は禁止だったよね。」
私 「そうだよ。それがゼミの掟(おきて)だよ。」
C子 「そのゼミの掟を破った人たちがいるよ。B男とD子だよ。」
私 「えー、嘘だろう。」
私がすぐに信じなかったので、B男がスマホの写真を見せてきた。
その写真には…
京都の金閣寺を背景に、仲よく写っているB男とD子の姿があった。
B男とD子が交際している証拠の写真だった。
(↑ ゼミの掟を破った二人)
2か月前に、D子の方から告白をしたらしい。
D子は卒業研究に苦しみ、また心身の調子を崩していたことは知っていた。
そんなD子が、何かと面倒をみてくれるB男に心を寄せることは不思議ではなかった。
他のゼミ生たちも、この事実を知ったのはつい最近らしい。
男女交際の禁止というゼミの掟のために、ゼミ生にも秘密にしていたようだった。
合宿中に、B男がD子に膝枕をしている場面を、偶然目撃したあるゼミ生は、
「え~、嘘だろう~、お前たち、ラブラブ?」
と思わず口にして、この状況をどのように解釈したらよいか、戸惑ったという。
もうゼミ活動は終わったし、くっつこうが離れようが、もうかまわないよ。
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コンパが終わりに近づくころ…
ゼミの皆から花束をもらった。
ゼミ生からの感謝の気持ちだった。
ゼミ生たちには、私に多大なる苦労をさせたという自覚が、一応あるらしい。
メッセージが添えられてあった。
「笹竹先生へ
今まで、たくさん迷惑をかけてごめんね。
ゼミ生より 愛をこめて…」
(↑ ゼミ生からの花束)
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ゼミ打ち上げのコンパの最後に、皆で集合写真を撮った。
もう卒業式まで、ゼミの全員が顔をそろえることはないだろう。
E子が突然泣き出した。
「さびしい…笹竹ゼミで本当によかった…」
E子の口から、嗚咽が漏れる。
仲のよいB子が肩を抱いて「さびしいよね」と言って、慰める。
(↑ さびしいと言って泣くE子)
卒業研究発表会が終わり、もうゼミ活動がないことが、急に実感としてこみあげてきたのだろう。
ゼミ活動の終わりはさびしいね。