誰だ?
ドアがあいて、ゼミ3年のA子とB子が入って来た。
なんだ、ゼミ生か…
A子は座ると、教採の勉強を始めた。
(↑ 勉強するA子)
B子は、スマホを取り出して、画面を見ながら言った。
B子 「先生、元彼からメールが来て困っています…」
私 「どういう内容なの?」
B子 「また付き合ってほしいという内容です」
B子は同じ部活の先輩と交際を始めたが、彼は卒業して、他県で就職した。
遠距離恋愛になったので、B子の方から別れたのだという。
その彼が、仕事の関係で地元の近隣に戻って来れそうになるので、また交際をしたいということのようだった。
B子は、元彼が嫌いではないが、いつもそばにいてくれる男性を求めている雰囲気だった。
B子は、元彼と再び付き合う気持ちは持っていないようだった。
私 「そのメールは無視した方がいいな」
B子 「え~、返信しているけど…」
隣で勉強をしていたA子が振り向いて、口をはさんだ。
A子 「だって、元彼を嫌いというわけではないからね」
私 「だけどね、元彼を半殺しにしていることになると思うよ。メールを返信すると、元彼は、交際が復活する可能性があると思うからね」
B子 「でも…元彼と楽しかった思い出が残っているので返信しちゃう…」
私 「だからこそ、すばっと関係を切るんだよ。このままズルズル続くと、楽しかった思い出がだいなしになってしまう」
B子 「元彼には、ズバッと言ってあるんですけど…でもメールが…」
私 「どのように、元彼に伝えたの?」
B子 「地元に戻っても、付き合うとは限らないよって…」
私 「それさ~、すばっと言ったことにならないよ。付き合わない場合もあるけど、付き合う場合もあるってことだから」
B子 「…そうか…」
私 「だから、彼は期待してメールを送ってくるんだよ。」
B子 「わかりました…」
私 「おもしろいね。これは使える!」
B子 「ん…使える?何に?」
A子 「先生の授業じゃあない? ゼミ生のでこんな人がいたって、学生に話すんだよ」
B子 「え~、1回につき、使用料を払ってね。どんなふうに使うの?」
私 「教育相談の授業かな。あいまいなメッセージが誤解を生むって感じかな」
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その時、電話が鳴った。
受話器を取ると、懐かしい声が響いた。
ゼミ4期生の〇〇だった。
5年ぶりになるだろうか…
〇〇は、中学校の教員だったが、ある事情で退職し、今は自分の店を持っているとのことだった。
実は、ゼミ4期生の〇〇から聞いたある体験談は、毎年授業で学生に紹介している。
教育相談の授業で、「卓球で負け続ける彼に愛情がさめはじめ、そんな自分に驚いた」というエピソードだ。
これは、ゼミ生の時に、〇〇が私に話してくれた体験だった。
まさか、自分の体験談が、毎年授業で紹介されているとは思わないだろうね。
〇〇には感謝しているよ。
その後〇〇は、その彼と結婚して、今は子どももいて、幸せな日々を送っている。
今日も授業のネタをゲットできた。
ありがとう~ B子。