〇〇は教員採用試験に合格し、現在は保健体育の中学校の教師。
全校生徒を対象に、友人関係についての講演をしてほしいという。
ゼミの卒業生からの依頼は断れない。
講演はひとりでもできるが、何かの勉強になると思い、ゼミ3年生3人を連れて行った。
講演に先立って、ゼミ3年生にランチを御馳走した。
半田市のア・トゥート・ボーレ。おしゃれな洋食屋さん。
手作りのハンバーグや前菜、デザートとドリンクもついていた。
お手伝いをしてくれたゼミ3年生(他にもう1人いる)
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講演の内容は、「うざい」、「きもい」などの言葉を使うと、密かに傷ついている友人がいるので、気を付けようというもの。
最初に、先生に以下のシナリオを演じてもらう。
A 「俺,中間テストで英語の点数が上がったんだ」
B 「うぜぇー」
A 「えへへ,数学も点数も上がってね」
B 「きもー,マジ,うぜぇー」
(個人情報保護のためぼかしを入れてた)
(個人情報保護のためぼかしを入た)
デバイスを使って、生徒たちの意見をスライドで集計しながら、話を進めた。
これらの言葉を相手から言われて、半分以上の生徒に傷ついた経験があった。
皆まじめに話を聞いていた様子だった。
なおPTA会長から「先生の声はマイクを通すと、後ろの席までよく聞こえた」と言われ、予想外にうれしかった。
体育館で声が響いてしまうので、特にゆっくり、はっきりと声を出すように気を付けていたが、これがよかったかもしれない。
講演の最後に代表者からお礼の言葉があった。
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この講演での一番の収穫は、ゼミ生の〇〇がすっかり教員になって生徒たちに指示を出すのを見たことだった。
堂々としていて、「怖そうな体育の先生」のような雰囲気も漂わせている。
でもゼミ担当教員にとっては、卒業しても、教員になっても、ゼミ生はゼミ生。
学生時代を知る者としては、「お~、やたらに泣いていた〇〇が、今ではすっかり先生になって!」
大げさに言えば、教師冥利に尽きるということだろう。
しかし…
講演が終わると、謝礼金を目当てにして、〇〇は私に近寄って来た。
「(おごってもらうのは)焼肉屋がいいかな。それとも丸いテーブルが回転してきて、エビや蟹がのっている中華料理もいいな~。」
学生時代もそうだった。私にご飯をおごらせようと、あの手この手を使ってきた。
このあたりは、学生時代からまったく成長していなかった〇〇であった。
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後日談がある。
大学の近くのイタリアンのお店。
ゼミ8期生の〇〇と△△と私。
〇〇はおいしそうに蟹クリームスパゲッティを口に運んでいる。
もちろん私のおごりである。
久しぶりに△△が大学に顔を出したので、一緒に食事をしてもよいと考え、あっさりおごることを認めたのである。
「ところで、先生」と〇〇が口を開いた。
「講演の後で、私が先生におごってもらおうとしたのは、先生がわたしとの約束の時間に7分遅れたからですよ。それをしっかりブログに書いておいてください。」
〇〇には〇〇の理屈があるようであった。
「わかったよ。仕方ないな。」と私。
〇〇は私の態度に満足したらしく、
「蟹クリームスパゲッティは本当においしい」
と言って、2皿目を注文していた。