2013年6月20日木曜日

教育実習は涙とともに

ある日、教育実習を終えたゼミ生のA子が、研究室に顔を出した。

ドアを開けて、一言もしゃべらずに、こちらを見ている。
 

A子の教育実習での様子は、すでに耳に入っていた。

ある先生が巡回指導で中学校を訪れ面談した際、A子が号泣したということを。

教育実習で指導を受ける教員から、かなり厳しく指導されていたようだった。



「教育実習、お疲れ様でした。」

私は、慎重に声をかけながらA子に近づいて行った。

「〇〇先生からA子の話を聞いたよ。」

「私が号泣したことを聞いたのね。」

「教育実習、辛かったんだね。」

「でもね、ホントはいい先生だったかも、と思っている。」

A子は教育実習のことを語り出した。




教育実習の様子(A子とは別のゼミ生)
 



教育実習の様子(A子とは別のゼミ生)
 
 

教育実習の指導教員は、厳しかった。

A子は授業を30時間も担当し、ほぼ一日中、授業をしていたときもあった。

そして授業後のコメントは「これじゃあ、教育実習の点はあげられないね。」というものだった。

実際に中学3年の男子生徒を上手にコントロールして、実技をやらせるのは至難の業だった。

自分の力不足は、A子も認めざるを得なかった。

このような教育実習の日々が続いた。




教育実習の様子(A子とは別のゼミ生)




教育実習の最終日、生徒たちと一緒にバスに乗って社会見学に出かけた。

帰りのバスの中、生徒たちがA子のために、お別れ会を開いてくれた。

生徒たちからお礼の言葉があった。

そして指導した教員が口を開いた。

「これまで教育実習生を何人も指導してきたが、その中でA子が一番頑張った。」

厳しかった指導教員から、A子をほめる言葉が出た。

思いもよらない言葉に、生徒がいる前にもかかわらず、A子は泣いた。

生徒ももらい泣きをした。


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語り終わるとA子は、1冊のノートを見せてくれた。

ノートの表紙には、教育実習で担当したクラスの生徒全員と指導した教員、そしてA子が写っている写真がはさみ込んであった。

大切にしている写真であることはすぐにわかった。

「教育実習は辛かったのだろうけど、でも大切で貴重な体験になったね。」と言葉をかけた。

そしてA子を一生懸命に指導してくれた中学校の教員に感謝した。