大府市勤労文化会館の一室にゼミ3年生がいる。
ゼミ3年の冬合宿だ。
皆、もくもくと卒業研究に取り組んでいる。
今年から、就職活動の開始時期が変わる。
これまでは12月開始だったが、今年からは3月開始となる。
つまり、就職活動のために、4年の前期は卒業研究をしている時間がないのだ。
そのためこの合宿で、卒業研究を進めておきたいのだ。
ゼミ生たちは、けっこう真剣に卒業研究に取り組んでいた。
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午後10時頃…
卒業研究でわからないことがあったら、私の部屋を尋ねてくることになっていた。
あるゼミ生が質問に来たので尋ねてみた。
「皆、部屋で、ちゃんと卒業研究をやっているかな」
「ちゃんとやっていますよ。誰も喋らないので、部屋はシーンとなっています。」
「おお!」
思いのほか、ゼミ生たちはまじめに卒業研究に取り組んでいる様子であった。
それにしても、部屋がシーンとなっていることにはびっくりしたな。
すると…
数人のゼミ生が私の部屋にやってきた。
皆、パソコンを持参している。
「ん? 自分たちの部屋ではやらないのかな」
これらのゼミ生たちは、他のゼミ生よりも、卒業研究が遅れていた。
早く皆に追いつこうとして、焦っていた。
効率よく卒業研究を進めるために、自分たちの部屋ではなく、私の部屋でやろうと考えたようであった。
わからないことがあったらすぐに私に質問できるので、好都合と考えたのだろう。
そして、午後11時が過ぎ、そして12時が過ぎ、そして午前1時になった。
ゼミ生たちは、自分たちの部屋に戻ろうとしない。
皆、必死なのだ。
私は、部屋の隅で寝転んで目をつぶった。
それを見たA子が言った。
「先生、かわいそう。フフフ、でも寝かせてあげない~」
そう言って、再びパソコンの画面に向かっていった。
(午前1時頃の私の部屋。右がA子)
他のゼミ生も、私が寝転んでも、見て見ぬふりをして、まったく黙殺していた。
結局、ゼミ生たちが私の部屋から出て行ったのは、午前2時少し前だった。
学生に付き合うのも楽ではない。
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翌朝…
昨夜、頑張ったらしく、皆疲れた表情をしている。
合宿は三日目で、けっこうストレスがたまっている。
人一倍ストレスを抱えたB子が言った。
「先生、おせんべいが食べたい。」
疲れていると、塩気のある食べ物が欲しくなる。
「そんなもの、あるわけないだろう。」と私は言った。
すると、B子は黙って、私のバックに近づいてきた。
実は、私も疲れていて、塩気が欲しくなり、昨日アオキスーパーで、おせんべいを買ってあったのだ。
おそらくB子はそれを知っていたのだろう。
B子は、私のバックのチャックを開け、おせんべいの袋を取りだして、数個のかたまりをつかみ、再びチャックを閉めた。
(B子がバックからおせんべいを抜き取る犯行の瞬間)
やがて、バリバリとB子がおせんべいを食べる音がした。
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おせんべいは食べられたものの、この合宿で卒業研究がかなり進んだ。
全員、抄録やモデル図がほぼ完成した。
だから、おせんべいの数個のかけらなど、我慢しなければならない。
この調子で4年生の前期を乗り切ろう。