2014年1月29日水曜日

最後の合宿もやっぱりプロレス

ゼミ15期生の最後の合宿。

卒業研究発表会に向けての練習をする。

 

合宿前も,ポスター作りでたいへんだった。

ポスターの色塗りを始めてから間違いに気づき,やり直すゼミ生もいた。

そのゼミ生はショックで,泣き出しそうだった。

私がそのことを指摘すると…

「先生,もうそれ以上言わないでください。言われると私…」

かわいそうになって,私が一人でぼそぼそ食べていたポテトチップスを分け与えた。


 (↑ ショックを受けるゼミ生とポテトチップス)


皆(学生も教員も),へとへとになりながら,合宿に突入した。

 
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発表練習が始まった。

間発表会で経験があるので、手慣れた感じだ。


 (↑ 発表の練習風景)
 
 
今回の合宿では,期間中に補講の授業や試験が入り,十分に時間が取れない。

あわただしい日程だ。

 しかし,そんなことにはおかまいなく,緊張感なく遊んでしまうのが,この15期生の特徴だ。

 そのために私がルールを作る。

私「~を完成させて合格しないと,食事には行ってはいけない。」

 合格できず,取り残されたゼミ生はA男にB子。

見かねたC子が、B子を厳しくサポートする。

C子「そこに座って。もっとシャキッとして。」(厳しい顔つき)

でもB子はいつものようにへらへらしている。

C子「B子を見捨てて,ご飯を食べに行くと思っているの!」(イライラしながら)

 


子は周囲にゼミ生がいると集中できない様子。

結局,B子を残して,C子は部屋に戻ってしまった。

 

一方,D男もへらへらしていて,畳に寝そべり,他のゼミ生にからんでいる。

女の子に近寄り、ポーズをとってにやにやしている。

ゼミの女の子たちは「D男,気持ちわりぃ~」を連発。

 
 
 (↑ 調子にのるD男)


私が食事などで部屋を離れると…

調子に乗ってゼミ生たちが、大広間のステージにのって歌を歌い始めた。

  
(↑ 歌を歌っている4人)


そして…

ついにプロレスが始まった。

広い場所があると,プロレスをやりたくなるらしい。

夏の合宿では,男一人に女二人が立ち向かってプロレスをやっていた。

今度の合宿では女の子同士。

女の子同志だが,けっこう激しい取り組みだ。

 


 (↑ 女の子2人のプロレスの様子)


ふつう,女の子がプロレスをやりたがるか?

ぶっとんだところのあるゼミ生たちだった。

 
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しかし…

しんみりと、こんなことを言うゼミ生がいた。

「最後にE子とプロレスができてよかったわ。」

体と体が激しくぶつかり合うことで,これまで以上に親しみを感じたらしかった。
 

そしてE子も言った。

「ゼミが始まって2年がたったけど,やっとゼミに馴染めた気がする。」

E子はしゃべりはするが,親しいゼミ生を除いて,距離を置くタイプ。

そんなE子がゼミ生にやっと馴染めたというのだ。

私も,E子が皆とプロレスをするなんて意外だった。

体を触れ合うということは、気持ちが近づいていた証拠だった。

プロレスにもこんな効果があったんだね。

 
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ところで…

肝心の卒業研究の発表練習は,まあまあだった。

なんとかぎりぎりの合格ラインに達した。

 

中間発表会で,自分の発表に不満足だったF子は頑張った。

皆が寝た後も,目をつぶって布団のなかで原稿を思い出していた。

表現があやふやな部分があると,枕元に置いてあった台本を持って,部屋から出る。

そして照明がついている階段に行って,台本を確認した。

プロレスもやったけど,発表練習も頑張っていたF子だった。

 

このようにして、ゼミ15期生の最後の合宿は終わったのだった。

 

 

 

 

2014年1月15日水曜日

スシローで一息

年が明けて最初のゼミ。

ゼミ4年生がぞろぞろ集まってくる。

卒業研究の本文と抄録は提出したが、発表会が残っている。

これからポスターと発表原稿を準備するのだ。

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A子がポスターの下図を持ってきた。

A子「先生、できました。見てください。」

私「A子にしては、下図が出来上がるのが早いな」

A子「もう、苦しみたくはないので…」

A子は本文の作成がかなり遅れ、締切に間に合わせるためにかなり苦労した。

だから今回は早めに完成させたいと思っているのだろう。


A男もポスターの下図を持ってきた。

バランスよく上手にレイアウトしてある。

私「お~、A男にしてはレイアウトが上手じゃん。」

私は率直な感想を口にした。

中間発表で作成したA男のポスターは、内容はしっかりしているのだが、レイアウトがしょぼかった。

それが、今回はなかなか上手になっている。

皆、学習効果が現れているね。

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B子がポスターの下図を持ってきた。

その下図をよくよく見ると、内容がおかしい。

データと解釈が食い違っている。

B子の抄録を見直す。

私「これ、おかしいのじゃないの?」

B子「やっぱりー。なんか、おかしいと思っていた。」

私「抄録は、昨日、印刷業者に渡した。間違ったまま印刷されてしまう。」

B子「ヤバくない?」

私「ヤバイ。」

B子はしばらく迷っていたが、この際、抄録を書き直すことを決心した。

そして、すでに印刷業者に渡っている原稿と差し替えが可能かどうか、打診することになった。

緊急事態だ。

私はすぐに研究室に戻り、印刷業者に電話する。

私「あの~、その~、お忙しいところ恐縮ですが~、昨日お渡しした原稿の一部を差し替えたいのですが…」(丁重な雰囲気)

業者「すでに作業が進行しています。その原稿は、冊子の前の方のページですか、後ろの方のページですか。」(毅然とした態度)

私「おそらく、真ん中あたりではないかと…」

業者「微妙ですね。今日の作業で、そのあたりまで終了していますから。でも、まあ一応、原稿を受け取りに明日うかがいます。」

演習室に戻ってそのことをB子に伝えた。

B子はさっそく抄録を修正し始めた。


(↑ ミスが見つかってあわてるA子)


私が密かにB子の写真を撮っていると、その私の姿を面白がって、他のゼミ生が私を写真に撮っていた。


 

(↑ 私を撮影しようとしているゼミ生2人)



なんとか、抄録の差し替えができそうでよかった…

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おなかがすいて、残っていたゼミ生4人とご飯を食べに行く。

スシローだ。

ゼミ生たちは、猛烈な勢いで注文しまくり。

圧倒されてしまう。

いったい何皿食べるつもりなんだろう。


(↑ 猛烈な勢いで食べるゼミ生たち)



B子「先生も注文しないと。誰も注文してくれないからねっ」

私「わ、わかった…」

私は、まぐろやサーモンの定番を注文する。

ゼミ生たちは、猛烈な勢いで食べたかと思うと、

「もう、おかなか一杯」と箸を置いた。

結局、8皿~10皿程度で、それほど多いわけではない。

やっぱり女の子。

ちょっと卒業研究で疲れたので、一息つけてよかったね。






2014年1月9日木曜日

チョコパイをめぐる攻防

昼休み…
 
研究室でランチを食べていると、ドアを激しくノックする者がいる。
 
こんなに乱暴にノックするのはゼミ生に決まっている。
 
やはりゼミ3年生のA子が入ってきた。
 
今日はおしゃれな私服姿。
 
夕方に新年会があるという。
 
A子は研究室に入るなり、
 
「先生、ここで着替えていいですか。これから武道場で授業があるのです。」
 
と言った。
 
もうすぐ昼休みが終わって授業が始まるので、急いでいるのだろう。
 
「いいよ、着替えている間は、俺はこっちを向いていればいいんだな。」
 
と言うと、
 
A子「どちらでもいいです。」(さばさばとした雰囲気)
 
私「・・・・・・・」
 
着替えを見られてもいいっていうこと?
 
もちろん、私はうつむいてランチをもくもくと食べていた。
 
A子は着替え終わったらしく、
 
「脱ぎっぱなしだけど、いいですね。それから先生のスリッパ借りていいですね。借りていこうっと。」
 
と言いながら、荷物を置いて、あわたただしく研究室から出て行った。
 
A子が研究室に入ってきて出ていった間は、わずか5分程度。
 
あっという間の出来事だった。

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やれやれと思ったその時…
 
またもや研究室のドアを叩く者がいる。
 
今度はゼミ4年生のB子とC子だった。
 
B子・C子「先生、合宿までに卒業研究の何をやればいいの?」(のんきな雰囲気)
 
私「ポスターの下書きを描いて、それから印刷して、それから発表原稿を作って~」(いかにもたいへんだぞという雰囲気)
 
B子・C子「え~、たいへんそう~」
 
私「まっ、間に合わなければ、2月上旬に特別発表会に延期してもいいけどね。」(嫌味っぽく)
 
B子・C子「そんなの、無理、無理」
 
私「それなら、今日やるんだな。」
 
そこでB子とC子は、卒論をやる気になったようだった。
 
そこにD子も加わって3人で卒論をやり始めた。
 
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私が大学院生の指導で、10分程度研究室を留守にして、戻ってくると…
 
3人がチョコパイを食べている。
 
実は、チョコパイを買って研究室の書棚の下に置いてあった。
 
ただし、その上にバックなどを置いて、見つからないようにしてあった。
 
まさか、私の大切なチョコパイを…
 
私は心配になって言った。
 
私「これ、俺のチョコパイだろう?」
 
B子「違います。」(きっぱり)
 
正直に白状しないので、
 
私「あっ、全部チョコパイが食べられている!」(悲しそうな声で)
 
D子「えっ、全部!」(おどろいた表情で)
 
B子「違うよ!何個か残して持ってきたから」(あわてて)
 
私のチョコパイを探し出し、皆に配ったのはB子であることが判明した。
 
D子「なんだ、先生の言うことは信用できんな!」
 
私「それはこっちが言うセリフだよ。」(食べたことを正直に白状しなかったくせに)


(↑ ゼミ生に食べられたチョコパイ)

 
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3人はチョコパイを食べてはいるが、卒論はあまり進んでいないようだった。
 
C子「先生~、どうやってポスター描いたらいいの~」
 
C子はすぐに教えてもらおうとする。
 
私「そんなに媚び売っても、俺が教えると思う?」
 
C子「私、先生がそばにいないとできないもん」
 
C子に限らず、ゼミ生たちは様々な理屈を持ち出して、教員にやらせようとする。
 
それを、いわばアメとムチで、ゼミ生たちに自分で考えさせようとするのが教員の仕事。
 
年が明けて、再びゼミ生たちとの戦いが始まった。

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しかし…
 
私はわかっていた。
 
ゼミ生たちがわいわい言いながら卒論をやるのは、もう数週間だけだということを。
 
卒業研究発表会が終われば、ゼミ活動は終わる。

ゼミ生全員が集まることは、もうないのだ。

その寂しさは、この時期の4年生には自覚できないだろう。

目の前にある卒論のことで、頭がいっぱいだから。

でも、私にはわかっていた。毎年経験しているから。

だから…

年が明けると、私の心の中に寂しさが漂い始める…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2014年1月5日日曜日

ゼミの卒業生からの年賀状

毎年お正月になると、ゼミの卒業生から年賀状が届く。 

結婚して子どもが生まれると、その子どもの写真が写った年賀状が。

結婚していない場合は、旅行先などでの自分を写した年賀状が。

今年もさまざまな年賀状が届いた。



(↑ 今年届いたゼミの卒業生からの年賀状) 
 


今年は30人のゼミ卒業生から年賀状が届いた。

ゼミの期ごとの内訳は、次の表のとおり。


 

ゼミ1期生は卒業して10年以上がたつが、年賀状のやり取りをしているゼミ生がいる。

顔はずいぶん大人っぽくなり、学生時代の面影はなくなりつつある。

それでも写真を見れば、誰なのかすぐにわかる。

なんとゼミ11期生は、半数以上と年賀状のやり取りがある。

ゼミ11期生は、個性豊かで、まとまりがとてもよかった。

NHKの「中学生日記」に出演していたゼミ生もいれば、童話を書いて賞をもらい、イタリア旅行したゼミ生もいた。

また現役で教員採用試験に合格したゼミ生もいたし、銀行員をやりながら教員をめざし、一発で合格したゼミ生もいた。

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卒業生からの年賀状を見ると、在学当時の出来事が思い浮かぶ。

ゼミ生ひとりひとりに、エピソードがある。

そういえば、こんなことがあったなと昔を振り返る。

卒業して年月がいくらたっても、浮かんでくるのは大学当時の顔だ。

私の心のなかのゼミ生は、何年たっても若い。

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返信する私の年賀状は、最近のゼミの様子を書く。

今年の年賀状には、ゼミで使っている演習室の様子や、同窓会で写したプリクラを載せた。



(↑ 今年のゼミ卒業生向けの年賀状)

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長い文章が書かれた年賀状があった。

A子からだった。



(↑ A子からの年賀状)

私が、幸せな人生を送ってほしいと特に願うゼミ生だ。

A子は卒業研究を提出した4年生の冬、発表会を目前にひかえていた時だった。

卒業研究の発表をし、4年生の必修科目の試験を受ければ、卒業できる状況だった。

しかし、A子の身に降りかかった悲惨な出来事によって、卒業が半年延期されてしまったのだ。

A子の受けた苦痛を思うと、今でも心が痛む。

卒業後、何年かして縁があって結婚し、そして今年出産予定だという。

よかった、よかった。

A子の年賀状には、陽気にこう書かれてあった。

「先生も定年までまだまだ頑張ってね!ずっと応援している!!」

明るいA子に、こちらが励まされている…