4年の夏合宿は、卒業研究の中間発表の練習をする。
おそらくゼミ合宿の中でもっとも精神的にハードだろう。
学生も教員も、けっこう精神的に追い詰められる。
今年は、さらに輪をかけて教員泣かせの合宿だった。
たとえば…
指定した時間どおりに合宿の会場に到着したのはゼミ生の半分で、あとは遅刻。
合宿までにやるべき宿題を出し、やらなかったらペナルティを出すと言ってあったのに、4人がやってこなかった。
発表練習なのに、ポスターを忘れてくるゼミ生も…
合宿中の食事では、皆がそろわないのに、勝手に食べ始めてしまったという残念な出来事もあった。
これらは、例年の合宿ではありえないことだ。
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しかし、この反面、例年では見られない面白い出来事もあった。
男と女のプロレスの試合。
ゼミ15期生は、男子のゼミ生が3人いる。
その中の男子1人に対して、女子2人がプロレスの試合を挑んだ。
なかなか迫力があった。目が離せない。
男子と女子が、畳の上に倒れこんでいる。
男子が、女子一人の首を足で絞め、さらに手を組んで他の女の子の首を絞めている。
(この写真をよく見ると、男1人に女が2人)
両者とも本気の一歩手前のレベルで戦っている。
これが喧嘩にまで発展しないのは、両者が最後のぎりぎりのところで手加減をしているためだろう。
高校生ならば、絶対に大喧嘩に発展するはずだ。
学生たちは、私がこのプロレスの試合をやめさせると思ったらしいが、止めるどころか、ビデオを撮り始めたので、拍子抜けしたようだった。
だって、滅多に見られないからね。
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また女同志で、お尻を回し蹴りすることもしていた。
相手を立たせておいて、もう一方がお尻めがけて、回し蹴りをするのだ。
鈍い音がして、相手が倒れこむ。
かなり痛そうだった。
でも、これはいじめではない。
皆、おもしろがって回し蹴りを受けているからだ。
痛みという身体感覚を楽しんでいるのだろうか。
成長ホルモンが疾風怒濤のように荒れ狂う思春期の男子がやるような遊び。
普通の女の子ならば、たぶんやらないだろう。
こんな遊びに、ちょっとびっくり。
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そして合宿中の誕生日パーティー。
不幸にして、合宿中に誕生日があたってしまったゼミ生がいた場合、誕生日パーティを行うのだ。
実は、ほぼ毎年のように行われている。
学生は、皆の誕生日を大切にしているのだね。
今年は、発表の指導が終わったのが深夜1時30分だったので、午前2時過ぎから開始。
午前2時30分頃、布団の上で皆がケーキを食べた。
(個人情報保護のためぼかし入り。中央の女の子がケーキを持っている。)
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もう一つ、ほほえましい場面がある。
仕上がりが遅れているゼミ生を、自主的に助けるゼミ生がいたことだ。
教員よりも厳しく指導している。
お互いが助け合ってよりよい発表にしていこうとする姿勢は、このゼミでもっとも重要視していることだ。
自分の発表を仕上げればよいというのであれば、合宿なんてやる意味がない。
このように他のゼミ生を助けようとする姿勢は、すばらしいと思う。
他にも、女子が数人で発表をし合って、わかりにくい点を指摘し合っている場面もあった。
このような状況では、私は一切口を出さない。見守るだけだ。
今回の合宿でも、部屋の戸をそっと開けて様子をうかがい、そして戸を閉めた。
学生たちがいろいろな意見を出し合って、何かを見出そうとしている姿は、とても好きだ。
学生たちが、教師の指導から離れ、自主的に皆で学ぼうとする姿を見ることは、おそらく教師にとって一番の喜びだと思う。
卒業研究の発表でも、教員が指導をしていないことを、自分で工夫して発表に盛り込んでいると、すごく嬉しくなる。
これだから、合宿はやめられない。
(連日、午前1時過ぎまで指導するのは、しんどかったけどね。)