久しぶりに研究室を訪ねて来た。
二人ともすでに結婚している。
私はこの二人の結婚式に出席をした。
ゼミ生の晴れ姿を、私は一生懸命写真におさめている。
(私が撮影しました)
そして現在…
A子は妊娠9ヶ月。もうすぐ出産である。さすがにお腹が大きい。
B子は8ヶ月の赤ちゃん連れである。
ゼミ9期生は仲がよく、とてもまとまりがあった。
そのためか、他の期のゼミよりも、合宿の回数が1回多い。
そう言えば、合宿の時、私が…
「ちょっと自宅に戻る。この合宿先から遠いので、戻って来るのに時間がかかる。」と言ったところ…
私の言葉を疑い、「先生の自宅は、この近くにあるに違いない」と推測して、私の後をつけたゼミ生たちがいた。
実は、歩いて数分の距離に私の自宅はあった。
ゼミ生たちは、私の後をつけ、見失ったが、最終的には私の自宅を探し出したのだった…(すごい執念!)
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A子が赤ちゃんに私を紹介する。
「この人が笹じいだよ。」
確かに年齢的には三世代にわたるが…
ゼミの卒業生が妊娠してお腹が大きくなったり、赤ちゃんを抱いているのを見ると、どうもピンとこない。
私の脳裏には、大学時代のゼミ生の面影が強く残っている。
何年たっても、当時の若々しいゼミ生のままである。
おそらく、青春時代のゼミ生と一緒に過ごした時間を、永遠なものにしておきたいと、無意識的に思っているのだろう。
私の中のゼミ生は年をとらない。
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実は、このゼミには忘れられない思い出がある。
ゼミ生のC子の母が、突然交通事故で亡くなったのだ。
その夜、C子から電話を受け取ったときの重苦しい瞬間は、今も忘れることができない。
私はゼミ生を連れて、C子の故郷に葬儀に向かった。
C子の故郷は、岐阜県と富山県の県境に近い山村であった。
途中、高速道路のひるがの高原のサービスエリアに立ち寄った。
晩秋の澄み切った空気に、山々が凛として清らかな姿を見せている。
深い悲しみに染み入るようだった。
私はずっと見つめ続けた。
(私が撮影しました)
卒業後、大阪のある会社からもらっていた内定を辞退して、C子は故郷の近くの小さな町で働き始めた。
小さな町の会社なので給料は安く、休日もアルバイトをした。
精神的にも、経済的にも厳しい生活をしているようだった。
年賀状には「貧乏暮らしにも慣れました。」と書かれてあった。
数年後、同窓会が名古屋で開かれた。
故郷から名古屋まで3時間以上かかって、C子は参加した。
「(母が亡くなって)3年がたち、やっと気持ちが落ち着くようになりました。」
C子は元気そうな表情でそう語った。
まだまだ厳しい生活は続いているが、心に少しずつ余裕が生まれ始めている様子であった。
C子には特に幸せな人生を送ってもらいたいと思う。
そしていつの日か、C子の故郷に行く機会があったなら、食事に誘い、いろいろ話をしたいと思っている。