2015年3月17日火曜日

もらい泣きで最後のお別れ

ゼミ16期生の卒業式の朝。

研究室にゼミ4年のA子がやってきた。

「先生,これ」と言って,私に買い物のビニール袋を差し出す。

中を見ると,インスタントラーメン3個,インスタント味噌汁3個,チョコパイ,せんべいが入っている。

「さんざん食べたからね。先生の好きなチョコパイも入っているよ。」

これまで研究室に置いてあったラーメンやお菓子を勝手に食べてしまった償いに,これらの物を買って,最後に私に持ってきたのだった。



(A子が持ってきてくれたお菓子)


A子の気持のこもっているこれらの物を,私は大切に受け取った。

問題は,これらの物をしっかり隠しておかないと,今のゼミ3年生に食べられてしまうということである。

(よくよく考えてみると,昨年度の卒業生が持ってきたお菓子を,今のゼミ4年生が勝手に食べてしまっていた…)


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その後で、ゼミ生たちに配るゼミアルバムを持ってプールの横を歩いていると,母親と一緒に歩いているゼミ4年のB子に出会った。

B子は私に寄ってきて言った。

「先生,これお土産。先生はこういうお菓子が好きでしょ」

B子は韓国に旅行に行き,韓国の酒マッコリを使ったチョコレートをお土産に買ってきてくれたのだった。



(B子からもらった韓国の酒マッコリを使ったチョコレート)


確かに,私は酒を使ったチョコレートが好きだ。

今でも,研究室の机の引き出しには,ブランディーの入ったチョコレートが入っている。

でも,酒を使ったチョコレートが好きだなんて,ゼミ生に言ったことがあったかな。

どうしてB子は,それを知っていたのかな。

まさか,研究室の机の引き出しを勝手にのぞいて…


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卒業式が始まった。

ゼミ生たちは,袴をつけている。

なんだか,いつものゼミ生たちとは違う感じがする。

袴を見ると,ゼミ生たちは巣立っていくんだなと,しみじみ思う。

袴は,独特の雰囲気を醸し出す。



(ゼミ16期生の袴姿)



(皆で撮った最後のゼミ写真)

学科に別れて卒業証書授与式が終わった後…

13番教室で,2年間のゼミ活動を記録したDVDを見る。



(13番教室でDVDを見た)


DVDを見終わった後、ゼミ生たちから贈り物をもらった。

ネクタイとピン,そしてハンカチだった。


(ゼミ生からのプレゼント)


包装紙には,浜松市のデパートの名前のシールが貼ってあり,誰が買ってきたのかはバレバレだった。

実は,その時、私が身につけていたネクタイは,ゼミ9期生から卒業式の時に贈られたものだった。

これからは,ゼミ16期生から贈られたネクタイも身につけることにしよう。

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その夜。

金山のANAクラウンホテルプラザ28階。

学科の卒業パーティーが開かれた。

今度はドレス姿のゼミ生たち。



(卒業パーティーの会場でのゼミ生たち)


花束贈呈の時だった。

花束を持ってB子が私の前に立った。



(花束を持って私に前に立ったB子)


私に花束を渡した後,私に飛びつき,抱きついてきた。

腓骨神経麻痺で足首に力が入らない私は,バランスを崩して倒れかけた。

そばにいたゼミ生があわてて私を支えてくれた。

最後までおちゃめな,かわいいB子だった。

ゼミ4年の冬合宿の時も,B子は私の背中に乗りかかってきたが,私はそれに応じず,おんぶをしなかった。

でも今日で最後なので,B子を受けとめてあげたかったなと少し後悔した。

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パーティーが終わって帰ろうとする時,A子が近くにいたので声をかけた。

「厳しい職場だと思うが(A子は銀行に就職する),A子なら頑張れると思う。1年間頑張ってみて,それからこの仕事が自分に向いているがどうかを考えたらいいと思う」

私は率直な気持を口にした。

A子は「そうだね…」と言ったが、そのうち、

「私,ひでほの…ひでほの…」

何やら言っていたが言葉にならず,そのうちA子は涙ぐみ始めた。

そばに寄って来たゼミ生が,もらい泣きになりそうになって「泣かないで」と言った。

突然A子が涙ぐんだので,私も不覚を取って涙ぐんでしまった。

「先生も泣いている~」と
D子が言った。

B子が追い打ちをかけて私に声をかける。

「先生,私たちのこと,一番…愛…」

その後を私に言わせようとする。

「愛しているよ」と私は言った。

B子は満足そうな顔をした。


ゼミ16期生たちと,
もらい泣きの最後の別れでした。

5年前のクリスマスカード

3月7日土曜日,午後7時。

名駅のレジャック5階。

見渡すと,8人の懐かしい顔がそろっている。

ゼミ11期生の同窓会だ。

他県からわざわざ駆けつけたゼミ生もいた。





(ゼミ11期生の同窓会)



(同窓会の様子)


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ゼミ11期生は,卒業して5年が経過した。

二十代後半の女性になっていた(このような表現は怒られそうだが)。

近況をたずねてみる。

結婚しても浮気をしたゼミ生や,刺激を求めて転職を繰り返すゼミ生がいた。


現在でも個性を十分に発揮している。

卒業して5年が経過しても,大学時代の行動傾向は変わらない。

「やっぱり,大学時代と同じだね。」と思いつつも,その変わらなさが妙に安心感をもたらす。

できることなら,ずっと変わって欲しくないと思ってしまう。

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そして…

話題はいつしか恋愛についてになっていた。

他県からわざわざ駆けつけたA子は,恋愛について悩みを持っていた。

結婚している同僚との不倫,その後交際した彼に身体を触られることの嫌悪感など。

さまざまな体験をどのように受けとめたらよいのか,その意味づけに苦しんでいるように思えた。

その体験を昔の友人に話し,自分の気持ちを整理したくて,わざわざ同窓会に何時間もかけて駆けつけたようであった。


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またB子の話も,私にとっては印象深かった。

以前は結婚をしたいと思っていたが,最近は,結婚というより,早く子どもが欲しいと思うようになった。

安全に出産をするためには,出産適齢期が大切だ。

そう考えると,それほど年齢的に余裕があるわけではないことに気がついた(私には十分余裕があると思えるのだが…)。

友人と一緒に合コンに参加しているが,男性に対する評価のポイントは、
性格とか趣味とか,一緒に生活する上で重要なものだという。

「顔なんてどうでもいい」という。

確かに,結婚を前提に考えると,そのとおりだ。

結婚適齢期を迎えた女性の素直な心情が表現されていた。


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ひとしきり話が出た後で,大学時代の昔話になった。

私が、当時記録した
ゼミ11期についての日記を読んで聞かせた。

いつもは日記などつけないが、たまたまゼミ11期だけは、日記をつけていた時があった。

「平成20年12月22日月曜日。


今日は金山でゼミ3年生の忘年会だった。

はじめての飲み会で,皆テンションが高かったなあ。(中略)

またB子がクリスマスカードを作ってくれてうれしかった。

ゼミ生からクリスマスカードをもらったのは,初めてだったから。

大切に保存しておこうと思った。」

B子は、私にクリスマスカードを贈ったことをすっかり忘れていた。



実は,この時B子からもらったクリスマスカードは,現在も残っている。



(大学3年の時にB子からもらったクリスマスカード)

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C子が言った。

「笹竹ゼミでよかったと思う。今でも皆とこんな話ができる。」

「私もそう思う。」と他県から駆けつけたA子も言った。

特にゼミ11期は,卒業してからも連帯感がすごい。

卒業してから5年が経過するのに,同窓会の雰囲気は,大学時代のゼミそのものだった。

そして,毎年私に送られてくる年賀状の枚数がもっとも多いのは,ゼミ11期だ。


今でも大学時代を大切にしているように感じられる。

社会に出てみると,利害関係がまったくなく,自由に素直に自分の気持ちを安心して語れる友人は,本当に貴重だ。

これからも,ゼミの仲間を大切にしていこうね。


なお余談ですが、この同窓会の間に、私は左腓骨神経麻痺になり、左足首に力が入らなくなりました。

なんとか帰宅したものの、その後、通院をすることになりました。神経麻痺ということで、飲酒もできなくなり…
















2015年3月16日月曜日

深夜2時まで卒業研究

2月のある暖かな日に…

大府市勤労文化会館の一室にゼミ3年生がいる。


ゼミ3年の冬合宿だ。


皆、もくもくと卒業研究に取り組んでいる。


今年から、就職活動の開始時期が変わる。


これまでは12月開始だったが、今年からは3月開始となる。

つまり、就職活動のために、4年の前期は卒業研究をしている時間がないのだ。


そのためこの合宿で、卒業研究を進めておきたいのだ。


ゼミ生たちは、けっこう真剣に卒業研究に取り組んでいた。


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午後10時頃…


卒業研究でわからないことがあったら、私の部屋を尋ねてくることになっていた。


あるゼミ生が質問に来たので尋ねてみた。


「皆、部屋で、ちゃんと卒業研究をやっているかな」


「ちゃんとやっていますよ。誰も喋らないので、部屋はシーンとなっています。」


「おお!」


思いのほか、ゼミ生たちはまじめに卒業研究に取り組んでいる様子であった。


それにしても、部屋がシーンとなっていることにはびっくりしたな。


すると…


数人のゼミ生が私の部屋にやってきた。


皆、パソコンを持参している。


「ん? 自分たちの部屋ではやらないのかな」


これらのゼミ生たちは、他のゼミ生よりも、卒業研究が遅れていた。


早く皆に追いつこうとして、焦っていた。


効率よく卒業研究を進めるために、自分たちの部屋ではなく、私の部屋でやろうと考えたようであった。

わからないことがあったらすぐに私に質問できるので、好都合と考えたのだろう。


パソコンを立ち上げると、カタカタとキーボードを打ち始めた。

そして、午後11時が過ぎ、そして12時が過ぎ、そして午前1時になった。


ゼミ生たちは、自分たちの部屋に戻ろうとしない。

皆、必死なのだ。




まあ、気持はわからなくもないが、さすがに午前1時をまわると、疲れて眠たくなる。

私は、部屋の隅で寝転んで目をつぶった。

それを見たA子が言った。

「先生、かわいそう。フフフ、でも寝かせてあげない~」

そう言って、再びパソコンの画面に向かっていった。




(午前1時頃の私の部屋。右がA子)


他のゼミ生も、私が寝転んでも、見て見ぬふりをして、まったく黙殺していた。


結局、ゼミ生たちが私の部屋から出て行ったのは、午前2時少し前だった。

学生に付き合うのも楽ではない。

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翌朝…


昨夜、頑張ったらしく、皆疲れた表情をしている。


合宿は三日目で、けっこうストレスがたまっている。


人一倍ストレスを抱えたB子が言った。


「先生、おせんべいが食べたい。」


疲れていると、塩気のある食べ物が欲しくなる。

「そんなもの、あるわけないだろう。」と私は言った。


すると、B子は黙って、私のバックに近づいてきた。


実は、私も疲れていて、塩気が欲しくなり、昨日アオキスーパーで、おせんべいを買ってあったのだ。


おそらくB子はそれを知っていたのだろう。

B子は、私のバックのチャックを開け、おせんべいの袋を取りだして、数個のかたまりをつかみ、再びチャックを閉めた。






(B子がバックからおせんべいを抜き取る犯行の瞬間)


やがて、バリバリとB子がおせんべいを食べる音がした。



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おせんべいは食べられたものの、この合宿で卒業研究がかなり進んだ。

全員、抄録やモデル図がほぼ完成した。


だから、おせんべいの数個のかけらなど、我慢しなければならない。

この調子で4年生の前期を乗り切ろう。