2015年2月7日土曜日

先生の前でストッキングを脱いだゼミ生

卒業研究会の発表会がやってきた。

合宿でかなり頑張ったので、上手に発表できるだろう。

発表会当時になると、もう教員としてやることはない。

ゼミ生の力を信じて、発表を見守るだけだ。

発表会では、皆、上手に発表していた。

質疑応答も、無難にこなしている。





(今年の卒業研究発表会の様子)


ただA子の発表だけは、ひやひやした。

台本を十分に覚えておらず、たどたどしいのだ。

途中で文章が思い出せなくて、発表が止まってしまう。

そんなA子の姿は痛々しかった。

一番前に座ったB子が、台本を見て、小声でA子に教えていた。

A子は、B子に助けてもらいながら、なんとか発表していた。

A子がなんとか発表できたのは、B子のおかげだ。

B子の助けがなければ、発表の規定時間を大幅に超え、発表やり直しになっていただろう。

それにしても、A子を助けてあげてとまったく指示していないのに、自主的にA子を助けてくれたのには感心した。

A子が発表する前から一番前に座っていたので、最初からA子を助けるつもりだったのだろう。

B子に感謝した。




(台本を見ながら、小声で教えるB子)


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発表会の終了後、演習室の掃除。

卒業研究でさんざんお世話になった演習室。

床には印刷ミスの用紙が放置され、ポスカなどは箱から出されて乱雑になっていた。

皆で担当を決めて掃除をする。

中間発表会の後では、掃除のご褒美にアイスを買ってと要求してきたが、今日はこの後に打ち上げパーティがあるため、誰も要求してこなかった。

掃除が終わって、打ち上げパーティに行くために、着替えをする。

発表会の後なので、皆スーツ姿だった。

演習室で着替えをするように言ったのに、研究室に来て、私のいる前で着替えをしようとする。

女の子たちは着替え慣れているのだろうか、上着を着て、体をくねらせながら、肌をさらすことなく器用に着替えている。

あるゼミ生は、「私、先生に着替えを見られても恥ずかしくないもん」と言いながら、スカートをまくって手を入れ、ストッキングを脱ぎ始めた。

大胆な行為だった。

そして脱いだストッキングを掲げて、「先生、コレ欲しい?」と言った。

しわしわになったストッキングが空中でひらひらと揺れた。

あいにく、私にそのような趣味はない。


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演習室の掃除が終わった後、タクシーが出払っていて頼めなかったので、徒歩で宴会会場まで行った。

大府駅前のサラリーマン向けの居酒屋だ。

ゼミの打ち上げパーティが始まった。







(ゼミ最後の飲み会)

ゼミ活動がすべて終了したので、ゼミ生にゼミの感想を聞いた。

「卒論、たいへんだったけど、皆に助けられた。」

「友だちできるか不安だったけど、こんなに楽しく2年間が過ごせるとは思わなかった。先生にもたくさん遊んでもらって楽しかった。」

「先生は、最初はいい人かと思ったけど、卒論やっているときはうざかった。」


皆、半分酔っ払ってしまっていて、ことばにどうも気持がこもっていなかった。

そのうち、C子が言い出した。

「先生、最後だからおごって~」

C子は大人びた雰囲気があって、おじさんを扱うのがうまい。

私は、つねづね「一番向いている仕事は、居酒屋の女将だ」とC子に言っていたほどだ。

私が「今日は財布に金が入っていない」と必死に抵抗すると、

「じゃあ、財布見せて~」と突っ込んでくる。

つい私が財布を見せると、財布を奪い取り、隣にいたD子と一緒になって中身を確認する。

1万円札を抜き取り、それで満足するのかと思って見ていると、


さらに小銭までも抜き取っている。


「あ~あ~、電車に乗って帰れなくなる~」と私が言うと、

「先生は、いつも回数券で電車に乗っているから、小銭がなくても平気だよ。」とB子が横から口を出す。


返された財布を見たら、1円玉が3個だけしか残っていなかった。






(先生の財布から1万円札と小銭を抜き取る犯行現場)


ゼミ生たちはこの金でデザートを追加注文し、さらに一人当たりの金額も安くすることができて、満足の様子だった。

最後まで油断も隙もないゼミ生たちだった。