2015年2月22日日曜日

「4年生がいなくて気楽だ~」と叫ぶ3年生


試験が終わったその日…

ゼミ3年生が研究室に集まってくる。

卒業研究のモデル図や抄録をやろうとする学生もいれば、履歴書を作成しようとする学生もいる。

もうすぐゼミ合宿があるので、それまでに完成させたいと思っているのだ。



(研究室でおしゃべりするゼミ3年生たち)


つい先日までは、ここにはゼミ4年生が集まり、卒業研究をやっていた。

それが今ではゼミ3年生が集まって、卒業研究をやっている。

毎年、このような情景が繰り返されていく。

学生たちが私の目の前に現われては去り、そして別の学生たちが私の目の前に現われる。

時の流れを実感する。

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ある学生がソファに腰をおろしながら叫んだ。

「4年生がいないから、気楽だ~」

実感がこもった言い方だった。

「あの先輩、怖かったね。」と別の学生も口をそろえる。

「そうそう、~という感じだったしね。」

卒業研究が終わって、怖い4年生はもう研究室に顔を出さないので、気楽さを感じているようだった。

やはり先輩ということで、3年生にしてみれば、4年生は怖い存在のようだ。

ただこの現象は、今年に限ったことではない。

どんな時代でも、先輩は怖い存在なのだ。

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羽を伸ばし始めた3年生のA子は、さっそく研究室の隅でごそごそやっていた。

やがてお菓子の入ったボックスを見つけ出して、持ってきた。

そのボックスには、私の好きなチョコパンの棒が入っていた。

それを勝手に食べ始めた。

4年生がお菓子を探し出して食べていたので、そのマネをしているのだ。

4年生が怖いというくせに、こういうところは、ちゃっかりマネをしている。

A子は「私、これが好きなの」と言って、5本ぐらい食べていた。

そばにいたゼミ生たちも一緒になって食べていた。

私の分の1個を残して、全部食べられてしまった。

歴史は繰り返されるということか…



(ゼミ3年生たちに食べられたチョコパン。袋が散乱している。)


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そのうち、B子が研究室にやってきた。

「先生、香港に行って、先生にお土産を買って…、あっ、なんでここにあるの!」

研究室のテーブルの上には、海外のフルーツ果汁の飴の缶が置いてあった。

私が成城石井で買ってきたものだ。


(研究室のテーブル置いてあるフルーツの飴)



B子は、このフルーツ果汁の飴の缶を、香港で買ってきたようだった。

「先生は、飴が好きなので、買ってきたのに…」とB子は言った。

ありがとう、気持はうれしいよ。

これに懲りずに、また私にお土産を買ってきてね。


2015年2月7日土曜日

先生の前でストッキングを脱いだゼミ生

卒業研究会の発表会がやってきた。

合宿でかなり頑張ったので、上手に発表できるだろう。

発表会当時になると、もう教員としてやることはない。

ゼミ生の力を信じて、発表を見守るだけだ。

発表会では、皆、上手に発表していた。

質疑応答も、無難にこなしている。





(今年の卒業研究発表会の様子)


ただA子の発表だけは、ひやひやした。

台本を十分に覚えておらず、たどたどしいのだ。

途中で文章が思い出せなくて、発表が止まってしまう。

そんなA子の姿は痛々しかった。

一番前に座ったB子が、台本を見て、小声でA子に教えていた。

A子は、B子に助けてもらいながら、なんとか発表していた。

A子がなんとか発表できたのは、B子のおかげだ。

B子の助けがなければ、発表の規定時間を大幅に超え、発表やり直しになっていただろう。

それにしても、A子を助けてあげてとまったく指示していないのに、自主的にA子を助けてくれたのには感心した。

A子が発表する前から一番前に座っていたので、最初からA子を助けるつもりだったのだろう。

B子に感謝した。




(台本を見ながら、小声で教えるB子)


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発表会の終了後、演習室の掃除。

卒業研究でさんざんお世話になった演習室。

床には印刷ミスの用紙が放置され、ポスカなどは箱から出されて乱雑になっていた。

皆で担当を決めて掃除をする。

中間発表会の後では、掃除のご褒美にアイスを買ってと要求してきたが、今日はこの後に打ち上げパーティがあるため、誰も要求してこなかった。

掃除が終わって、打ち上げパーティに行くために、着替えをする。

発表会の後なので、皆スーツ姿だった。

演習室で着替えをするように言ったのに、研究室に来て、私のいる前で着替えをしようとする。

女の子たちは着替え慣れているのだろうか、上着を着て、体をくねらせながら、肌をさらすことなく器用に着替えている。

あるゼミ生は、「私、先生に着替えを見られても恥ずかしくないもん」と言いながら、スカートをまくって手を入れ、ストッキングを脱ぎ始めた。

大胆な行為だった。

そして脱いだストッキングを掲げて、「先生、コレ欲しい?」と言った。

しわしわになったストッキングが空中でひらひらと揺れた。

あいにく、私にそのような趣味はない。


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演習室の掃除が終わった後、タクシーが出払っていて頼めなかったので、徒歩で宴会会場まで行った。

大府駅前のサラリーマン向けの居酒屋だ。

ゼミの打ち上げパーティが始まった。







(ゼミ最後の飲み会)

ゼミ活動がすべて終了したので、ゼミ生にゼミの感想を聞いた。

「卒論、たいへんだったけど、皆に助けられた。」

「友だちできるか不安だったけど、こんなに楽しく2年間が過ごせるとは思わなかった。先生にもたくさん遊んでもらって楽しかった。」

「先生は、最初はいい人かと思ったけど、卒論やっているときはうざかった。」


皆、半分酔っ払ってしまっていて、ことばにどうも気持がこもっていなかった。

そのうち、C子が言い出した。

「先生、最後だからおごって~」

C子は大人びた雰囲気があって、おじさんを扱うのがうまい。

私は、つねづね「一番向いている仕事は、居酒屋の女将だ」とC子に言っていたほどだ。

私が「今日は財布に金が入っていない」と必死に抵抗すると、

「じゃあ、財布見せて~」と突っ込んでくる。

つい私が財布を見せると、財布を奪い取り、隣にいたD子と一緒になって中身を確認する。

1万円札を抜き取り、それで満足するのかと思って見ていると、


さらに小銭までも抜き取っている。


「あ~あ~、電車に乗って帰れなくなる~」と私が言うと、

「先生は、いつも回数券で電車に乗っているから、小銭がなくても平気だよ。」とB子が横から口を出す。


返された財布を見たら、1円玉が3個だけしか残っていなかった。






(先生の財布から1万円札と小銭を抜き取る犯行現場)


ゼミ生たちはこの金でデザートを追加注文し、さらに一人当たりの金額も安くすることができて、満足の様子だった。

最後まで油断も隙もないゼミ生たちだった。


2015年2月2日月曜日

まさかのポスターやり直し

ゼミ4年の合宿が始まった。

これが最後の合宿となる。


合宿が終わるとすぐに卒業研究発表会。


そしてすべてのゼミ活動が終わる。





(今年の4年の最終ゼミ合宿の様子)


合宿では、グループに分かれて発表原稿のチェックをする。


わかりにくい点を指摘し合うのだ。


そして台本を修正し、よりわかりやすい表現にする。



笹竹ゼミでは、グループ活動を重視しているため、このような方法をとっている。


ゼミによっては、卒業研究は、教員とゼミ生の1対1で進めている。


ゼミ生は、決められた時間に研究室に行き、個別に指導を受けるのだ。

ゼミ生と1対1で、教員が指導した方が効率がよい。

学生は研究室に行けば、すぐに教員の指導を受けられる。


おそらく、笹竹ゼミのように全員集まって卒業研究を行っているところは少ないだろう。

しかし、笹竹ゼミでは、皆で一緒に相談し合い、卒業研究を作り上げていく方法をとっている。


ゼミ生たちの交流を重視しているからだ。


だから、自分の作業を終わらせて、他のゼミ生と交流を持たず、スマホで時間をつぶしながら教員の指導の順番を待つというのでは、笹竹ゼミに入った意味がない。


他のゼミ生と確認しあったり、遅れているゼミ生を助けたりすることが大切なのだ。


合宿では、ゼミ生同士の濃密な交流ができる時間が確保できる。

だから笹竹ゼミでは、合宿を重視している。


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夜になっても、ゼミ生たちは、卒業研究の台本の修正をしていた。


次々をゼミ生たちが私の部屋に来て、表現がわからないところの指導を求めて来る。


そのうち、A子とB子とC子の3人がそろって、私の部屋にやって来た。


A子が言った。


「先生!重大なミスに気がついた!」


A子が発表練習をし、B子とC子が表現をチェックしていったところ、分析結果がおかしいことに気がついたというのだ。


その説明を聞いてみると、確かにおかしい。


データ分析が間違っている…


私も見逃していたのだ(実は、よくあることだが…)


ヤ、ヤバイ!


卒業研究発表会はもうすぐだ。


今から、ポスターの下図を作り直し、発表原稿も修正し、しかもそれを覚えなければならない。


時間が足りない…


A子は焦っていた。


しかし、やらざるを得ない。


時間がないので、私が分析をし直してあげることにした。


「A子、データは持っているか」


「データがない…あっ、ゼミのUSBに入っているかも」


幸いなことに、USBにA子のデータが入っていた。


私がパソコンを立ち上げて、急いでデータの分析をする。


有意差も出て、なんとか使える結果が得られた。


よし、これでいこう。


私は結果をグラフに示し、その解釈も教えて、これらをメモしてA子たちに渡した。


「この結果をもとに、ポスターの図を考え、発表原稿を修正してごらん。」


この時、夜の午後11時を過ぎていた。


3人で、熱心な話し合いが続いている。





(3人で深夜まで話し合いが続いた)


私はその話し合いにはほとんど加わることはなかった。


この3人は、昼間から熱心にグループで力を合わせており、最後まで3人にゆだねようと思っていた。


この話し合いは、深夜1時まで続いた。


結局、ポスター3枚のうち、2枚を修正することになった。

A子が私の部屋から出るとき、言った。


「今から部屋に戻って、パソコンでポスターの下図を作り直します。」


睡眠を削ってまで作業を進め、早く皆に追いつきたいのだろう。


根性を出しているA子がいた。







(根性を出して頑張ったA子)


結局、A子は、午前4時までかかって、パソコンでポスターを作成していた。


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このように、あわただしく合宿は過ぎていった。


ゼミ生は、精神的に追い詰められていて、皆ストレスを抱えていた。

ストレスを発散したかったのだろうか、突然、D子がステージで踊り出した。

この会場には、宴会用のステージがあった。

そのステージに上り、D子は音楽に合わせて、ソーラン節を踊っていた。

なぜソーラン節なのかは、不明である。




(突然、ソーラン節をり出したD子)


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翌朝…


午前9時に私の部屋の電話が鳴った。


寝ぼけた声が聞こえる。


「先生~、目覚まし時計をかけ忘れて、皆、寝坊しました~」


「仕方ないな、開始を1時間遅らせよう」と私は言った。


聞いてみると、なんと、ほとんどのゼミ生は、午前3時頃まで発表練習をしていた(ただし2名は、ぐうぐう寝ていたらしい)。


ゼミ生たちは、夜になるとやる気のスイッチが入るようだった。


合宿の最終日は、発表の試験を行うことになっていた。


私の前で発表して、途中で止まったり、いい間違えをした場合は、その時点で不合格という過酷な試験だ。


ゼミ生たちは、その過酷な試験のために、頑張っていた。






(過酷な試験が始まった)


皆、仕上がりは順調だった。



あのA子は、ポスターを完成させていた。


グループのメンバーが、自分の発表練習をせずに、A子のポスターの色塗りをしてくれたのだ。

A子は皆に追いつき、もくもくと発表練習をしていた。

一時はどうなることやらと思ったが、A子は根性を出してがんばり、それをグループのメンバーが一生懸命、支えてくれた。

チームワークのおかげでここまで来れた。

皆、よくがんばったね。