2014年7月26日土曜日

突然の訪問者

ある日の昼頃のこと…

用事を済ませて戻って来て、研究室のドアを開けた。

さあ、ランチだ。

おっ、女性のサンダルがある。

ゼミ生かな。

そう思って部屋の中を見ると、女性がソファに寝そべっている。

よくよく見ると、なんと今春卒業したA子だった。





(↑ 今春卒業したA子)



連絡なく、突然、研究室にやってきたのだった。

A子は、在学中、テキパキと卒業研究をこなしていた。

そして、いつも品のあるおしゃれをしていた。

しかし、今日は雰囲気が違う!

体がだるそうで、元気がない。

「どうしたんだ?」

私が声をかける。

「数日前から、微熱があって…」

いろいろ聞いてみると、仕事のストレスのようだ。

営業のノルマは厳しく、9時過ぎに帰宅して…

さすがのA子も、心身ともにまいってしまったようだった。

A子と話していると、ゼミ4年生たちが集まってきた。

ちょうど静岡県の教員採用試験が終わり、その話で盛り上がっている。

今週末は、愛知県の教員採用試験なので、皆で情報交換をしている。

ゼミ4年生が集まってきたので、A子はちょっと居心地が悪そうだった。

A子は、研究室でもっとゆっくりしたかったと思うのだが…

A子は誰かにちょうど連絡が取れて、その人に会いに帰って行った。

その後、A子は元気にやっているのだろうか…

私へのお土産に、チョコパイがテーブルの上に置いてあった。

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愛知県の教員採用試験がせまっていた。

教職をめざすゼミ4年生はちょっと興奮気味。

B子「先生、私、面接が不安でたまらないんだけど…」

私「そうだな、まっ、自分を信じることだな。」

B子「そんな当たり前のこと言わないでください!」

適当なことを言うと、鋭く突っ込まれてしまう。

そのうち、就活がうまくいかず、苦しんでいるC子も研究室にやってきた。

C子は、就活で疲れているらしく、ソファに寝転んだ。

卒業生のA子にしろ、ゼミ4年生のC子にしろ、皆よくソファに寝転ぶ。

私がソファに寝転ぶC子を、すかさず写真にとった。






(↑ 就活に疲れて寝転ぶC子)



C子「先生!盗撮はやめてください。」

私「盗撮というのは、隠れて写真を撮ることだろう。隠れて撮っていないけど。」

私の理屈にC子は不満顔。

私「そもそも、うちの研究室には個人情報の保護という概念がないんだ。」

C子「わかりました。それでは、先生のチョコパイを勝手に食べてもよいということですね。」

個人情報保護と、チョコパイと、どのような関係があるのか、よくわからなかったが…

しかし、C子の発言が決め手となって、卒業生のA子のお土産のチョコパイが被害にあった。

私が研究室を留守にした時、私の分1個を残して、研究室にいたゼミ生たちが食べてしまった。

ああ、A子のお土産が…





(↑ 私の分が1個だけ残されてあった)



この時期のゼミ4年生は、教員採用試験やら就活で、殺気だっていたのだった。





2014年7月2日水曜日

深夜の恋愛相談

ゼミ3年の夏合宿。

初日が終わり、身体のすべてにけだるい疲れが感じられる。

夜11時、私は布団の上で、パジャマに着替え、寝る準備をした。

枕元のiPodからは、以前テレビの仕事をしたときに知り合ったタレントの歌が流れている。

私の好きな曲だ。

さあ、寝るかー

と、その時…

どすん、どすんと音が鳴り響き、2階からゼミ生が階段を降りてきた。

私の部屋のドアが開いた。

「先生~、相談があるんですけど~」

数人のゼミ生が顔をのぞかせていた。

「えっ、まあ、いいよ」と私。

部屋に入ってくるなり、あるゼミ生が、

「あっ、この音楽、確か授業で聞いたような…」

「そうだよ。健康心理学の授業の時、俺の自己紹介ビデオで流している曲だよ。」

私は布団の上にあぐらをかいて、座り直した。

「でー、相談は何だ?」

もちろん聞くまでもなく、恋愛の相談に決まっていた。

あるゼミ生が恋愛についての話を始めた。

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私は恋愛の相談が好きだ。

ゼミ生の恋愛の話を聞いていると、青春を感じる。

単純には割り切れないさまざまな感情がうごめいている。

自分で自分の感情をどのように受けとめたらよいのか、わからない。

自分の感情の意味付けで苦しんでいる。

私の年齢になると、自分の感情を割り切ることができる。

若い頃と比較すると、びっくりするぐらい自分の感情の揺れが収まった。

だから悩むことが少なくなる。

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ゼミ生の恋愛はいろいろだった。

交際している彼についての悩みもあれば、別れた彼についての悩みもあった。

カウンセリングをするように、真剣にゼミ生の恋愛の話に付き合った。

すでに深夜12時を過ぎている。

疲れが出たゼミ生が、私のそばで寝始めた。

あるゼミ生のお腹を枕にして、寝ているゼミ生もいた。

ごろごろ寝ているので、ゼミ生がマグロに見えた。




(マグロのように寝るゼミ生たち、矢印の学生はお腹を枕にして寝ている。)


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合宿で使う施設の近くにパン屋がある。

高級なパン屋で、見るからにおいしそうなパンが並んでいる。

合宿になると、私はよくこのパン屋に来る。

合宿の第一日目の昼食も、ここでパンを買って食べた。





(↑ 合宿での私の昼食。左はバナナソースのフランスパン、右はカレーパン)



でも、気がついたことがある。

ゼミ生が料理コンテストで必死につくった夕食。

昨夜の夕食の残りの食材で、ゼミ生が工夫して調理した朝食。

ゼミ生の料理の方がはるかにおいしいと私は思った。

プロではないので、料理は洗練されていない。

パン屋の方が、ビジュアル的にきれいだし、おいしそうだし、高級感もある。

しかしそれだけだ。

ゼミ生のつくった料理には、それを超える何かがあった。





(↑ ゼミ生がつくった夕食。左のカップは、いろいろな具材が入った餃子スープ。)



ゼミ生の調理する後ろ姿は惹き付けられる。

普段見せることのない雰囲気が漂っている。

きっと、このゼミ生たちが母になった時、こんな感じなんだろうなと思った。

少しだけ、ゼミ生の背中が大きく見えた。

このゼミ生たちを新たに発見した合宿となった。




(↑ 夕食をつくるゼミ生たち)