2015年7月19日日曜日

深夜0時からの恋愛相談

ゼミ3年(ゼミ18期生)の夏合宿の初日の夜。

午後11時頃、ログハウスの2階は静かだ。

ゼミ生たちはもう寝ているのだろうか。



(深夜のログハウス)



今年のゼミ生たちは、人数が少ないためか、全体的にそれほど騒がしくない。

さて、私も寝る準備をしようかと思い、歯を磨いていた。

すると…

ログハウスの玄関が突然開いて、ゼミ生3人がワイワイ言いながら入ってきた。

男2人に女一人。(今年のゼミは男子が2人いる。)

「どこに行っていたんだ?」と私。

「夜の散歩に行っていました。そしたらね、先生~」

おしゃべりなA子が、「怖かった、怖かった」を連発する。

よくよく聞いてみると、どこかの家の窓から室内が見えて、室内に奇妙な絵が飾ってあったというのだ。

その絵がとても怖かったらしい。

「ピカソみたいな絵なんだろう。それが芸術だよ。」と私が言った。

でもA子は気持が収まらないらしい。

「今晩は眠れない」などと言っている。

「仕方ないな、そんなに怖いのなら、今晩はB男とC男の間で寝ることを許可するよ。」と私は言った。

即座にA子は言った。

「それは、遠慮しとくわ。」

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まだ午後11時過ぎだったので、散歩から帰ってきたゼミ生たちや、寝ずに起きていたゼミ生と個人面談をすることにした。

私は一人10分ぐらいで、個人面談は終わるだろうと軽く考えていた。

しかし、個人面談をはじめて見ると、そう簡単には終わらなかった。

進路の話、恋愛の話など、悩みは尽きない。

D子の恋愛の相談が終わったのが、午前0時を過ぎだった。

さあ、寝ようと思った時…

D子が言った。

「先生、E子が恋愛の相談があると言っています。悩んでいて、胃が痛くて、眠れないと言っています。」

「なにー、眠れないのかー、仕方ないなあ。」

私は午前0時過ぎから、E子の恋愛の相談にのることにした。


交際している数年間、彼の特徴ある態度が、ずっと気になっていたようだった。

合宿中に送られてきたメールに、その態度が現れていて、E子は苦しんでいた。

やがて、E子の恋愛相談が終わった。

時計を見たら、午前1時。

今回の合宿は早く寝られると思ったが、そんなあまくはなかった。





(今年の料理コンテストのテーマは花火だった)



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翌朝も、朝食前に、E子は私のところにやってきた。

「先生、彼からメールが来ました…」

E子は、彼からのメールにショックを受けていた。

彼のメールの表現は、E子にとっては、かなりキツイ表現だった。

その時、E子の頬に涙が一粒転がるように落ちるのを、私は見た。

その一粒の涙が、とても美しく感じられた。

E子の清らかな心から生まれた純粋な一滴だと思った。

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ゼミ生たちは、けっこう恋愛に悩んでいたが、私のような年齢になると、とても美しく感じられる。

特に片思いや、もう少しで恋人になりそうな段階がめちゃくちゃいい。


切なくて、切なくて、そこがいい。

交際し始めると、欲求不満や浮気などの心配が出てきて、美しさが減ってしまう。

若い頃は、すぐに交際にこぎ着けることを考えてしまうけど。


ところで、E子は、その後彼と中直ししたようだった。


よかった。よかった。


2015年7月13日月曜日

トイレに閉じこもって泣いた教育実習生

今年も教育実習の季節がやってきた。

私も,学生たちの実習先に訪問することになる。

今年は,ゼミ生2人を私が担当することになった。

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まず田舎の県立高校で教育実習を行っているA子を訪ねた。

教育実習に入る前に,私はA子に念を押していた。

「この地図に,高校の正門を記入しておいて。そうでないと正門を探し回らないといけないので。」

A子は,高校の正門に印を付けて,私に教育実習の資料を持ってきた。

当日,最寄りの駅で下車し,私はA子の作成した地図を頼りに,高校に向かって歩き始めた。

おそらく順調に歩けば,15分ぐらいで高校に到着するはずだ。

ところが…

A子の作成した地図どおりに歩いていると,途中からどんどん田舎に入っていく。

山に囲まれた田をぬうようにして,道が続いている。

こんな山奥に高校があるのかな…

人も車も通らない…

しかし,やがて高校が見えてきた。

地図を確認して,正門を入ろうとすると…

これって,正門?

柵があって入れないようになっている。




(↑A子が教えてくれた“正門”)


気を取り直して,横から入れるかもしれないと思い,付近を探索した。

しかし,厳重な囲いがしてあった。

「A子にやられた! 」

私は,すばやく元の道を引き返し,どこで間違えたのかを調べ始めた。

途中で,広い道から外れている分岐点があった。

この広い道を進んでいこう。

私は高校の正門を探しながら走った。

幸い,高校の正門を見つけることができた。

約束の5分遅れで,職員室に顔を出したのだった。

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A子は普段から天然ぼけのタイプで,ミスはするが,憎めないところがあった。

教育実習でもミスの連続の様子だった。

生徒に走り幅跳びの説明をしたところ,その説明が間違っていて,生徒に舌打ちされたりしていた。

担当の指導教員に教育実習の日誌を提出したところ,「単なる私的な日記」と言われて返された。

A子は,「私,いろいろ、やらかしています」と元気なく言った。

食欲はなく,朝になって学校の行く時になると,吐き気がするという。

大丈夫かな,と私は心配になった。


(「私、やらかしています」と自虐気味のA子)

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教育実習が終わってみると,たいへんなのはA子だけではなかった。

ゼミ生のB子もけっこう大変だったらしい。

帰宅するのは午後10時過ぎがあたりまえ。

指導の担当教員以外に,厳しい教員がいて,よく注意された。

教育実習の最終日も,授業で資料を配付する時間がなくなってしまったので,担任にお願いをした。

そしたら,「担任に資料の配付を任せるって,どういうこと!」と厳しく注意されたという。

その日の夜,教育実習が終了したので,飲み会があった。

B子は,その厳しい教員の顔を見ていると,涙が止まらなくなってしまった。

そしてトイレに閉じこもって泣いた。

先生方が心配して,トイレにやってきて「出ておいで」と声をかけた。

B子は「気持が落ち着いたら,戻ります。」と応えた。

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こんな話を演習室で他のゼミ生に話ながら,B子は言った。

「もう二度と,あの学校には行きたくない。」

よほど辛い思いをしたのだろう。

A子もB子も,かなり辛い教育実習だったようだ。

まあ,社会の厳しさを少し体験できたことは,今後に役に立つと思うよ。