さわやかな多治見の朝。
いつもの産業文化センター。
久しぶりのゼミ4年生の面々がそろった。
これからゼミ4年生の合宿が始まる。
卒業研究の中間発表の練習をするのだ。
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合宿が始まるなり、A子が私に言った。
「私、先生とおだやかな関係になりたいの」
「……どういうこと?」
「抄録を作成した時のようにはなりたくないの」
A子は抄録の書式のミスで、私にさんざダメ出しを食らっていた。
そのため怒って「先生のこと、本当に嫌いになっちゃうから」と言っていた。
A子はその出来事を言っているらしかった。
もっとも私はA子と「おだやかな関係ではなくなった」などとは、まったく感じていなかった。
いつでも、どこでもA子とは普通の関係なんだけどな。
(↑ おだやかな関係になりたいと言ったA子)
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発表練習をひとりひとり時間をかけて指導する。
合宿でないと、こんなに丁寧に指導はできない。
B子を指導している時だった。
私 「もっと元気を出して、オーラが足りない。」
B子 「そんなに元気を出したら、私の魅力がなくなってしまう」
私 「……」
B子は、弱々しい雰囲気を出して、男に守ってあげたい感情を引き起こさせたいと考えているようだった。
気持はわかるが、卒業研究の発表会の時まで、男に魅力を感じさせなくても…。
ふだんに十分魅力を感じさせればいいんだよ。
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ゼミ16期生は、皆優秀で、卒業研究の発表練習の仕上がりは早かった。
グループに分かれて練習をしたため、グループ内でかなりサポートしたようだった。
発表が苦手な学生も、他のゼミ生に助けられて(尻を叩かれて)、なんとか上手に発表できるようになった。
(↑ グループ内で発表練習する様子。疲れて寝ているゼミ生もいるが…)
ただ3人のゼミ生は、発表練習をしていくなかで、発表とポスターの図柄が一致していないことがわかり、ポスターをやり直すことになってしまった。
夜、12時を過ぎた頃…
(↑ 深夜のログハウス)
突然、誕生日パーティーが始まった。
ちょうど合宿中にC子の誕生日が当たってしまったのだ
C子に秘密にして、他のゼミ生がケーキを作った。
それをサプライズにして、深夜12時になった瞬間に、C子にプレゼントしたのだった。
(↑ 誕生日パーティ。ケーキを持っているのがC子)
合宿の2日目、深夜1時のことだった。
私は疲れてしまい、もう指導は打ち切りと宣言した。
そして布団を敷いて寝ようとした。
するとD子が言った。
「先生、私のポスターの下図を印刷してください。」
D子は卒業研究の取り組みが遅れていて、9月の中間発表会では発表できず、10月の特別発表会で発表することが決まっていた。
皆がポスターを広げて発表練習をする中、まだポスターの下図を作っていた。
皆とほとんど話をせず、ひとり黙々とパソコンに向かっていたのだった。
「もう眠たいので、明日プリントアウトしてあげるよ。」
私がそう言うと、D子は怒りだした。
「プリントアウトする方が早く寝られることを、思い知らせてやる!」
D子はそう言うと、私が片付けた小型プリンタを持ち出して、畳の上に投げつけた。
小型プリンタの電池カバーが外れた。
そして私の布団からシーツをはがすなど、暴れ始めた。
ふだんとてもおとなしいD子が暴れ始めたので、とても不気味だった。
私は怖くなって2階に逃げた。
「D子がキレた!」
私が状況を話すと、B子やC子は面白がって、目をきらきらさせながら聞いていた。
E子が心配して言った。
「先生、私たちの部屋で寝ていいですよ。私たちは気にしないですから。」
確かに、一人で寝たくはなかった。
夜中にD子に何をされるかわからない不安があった。
しかし、さすがに女子学生と同じ部屋に寝るわけにはいかない。
すると、下の階から、ドスン、ドスンという音が響いてきた。
D子はいったい何をしているのだろうか。
私はびくびくして、他のゼミ生は面白がって、しばらくじっとしていた。
音がやんだので、E子が様子を見に1階に降りていった。
そして、戻ってきて私に言った。
「D子さんが、先生はもう寝ていいですと言っていますよ。」
顔つきも落ち着いているという。
そこで私はそっと1階に降りていった。
B子やC子は興味津々で、一緒に1階に降りてきた。
私の部屋をのぞくと…
部屋の状況にびっくりした。
西側のカーテンの半分が取り外され、外が丸見えになっている。
南側のカーテンは開けられて、縛られている。
布団はぐちゃぐちゃ、シーツがまるで紐のように、結ばれている。
いったいD子は何をしていたのだろうかー
(↑ 私のふとんはぐちゃぐちゃ、枕カバーもはずされ…)
(↑ 私のシーツは、何回も結ばれていた…)
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ふだんおとなしいD子が、なぜ突然キレたのだろうか。
よくよく考えると、D子なりのさびしさや孤独感があったのではないかと思う。
皆がポスターの発表練習に取り組んでいるのに、自分一人だけ取り残され、別の作業をしている。
皆と話すこともなかった。
「先生は、ポスターの発表練習にばかり指導していて、あまり自分を指導してくれない。」と思っていたのではなかろうか。
そして、その不満が爆発したのではなかろうか。
D子に悪いことをしてしまった…
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翌朝…
当番のゼミ生が、腕を振るって朝食を作った。
おしゃれなカフェのモーニング風。
限られた食材を工夫して盛りつけた。
なかなかおしゃれだ。
パンは、クロワッサンとレーズンパン。
フルーツは、巨峰とバナナ。
そしてカップにはヨーグルトにナッツのトッピング。
(↑ ゼミ生のつくった朝食)
朝食の後も産業文化センターで発表練習。
まあまあ、仕上がりは順調。
皆よくがんばった夏合宿でした。
それにしても、真夜中の乱闘事件はびっくりしたなあ…