ゼミ4年のA子はそう言って、教育実習に入っていった。
教育実習に強い不安を抱えていたのだ。
そして3週間が経過した…
A子は、私に電話してくることはなかった。
無事、教育実習は終わったようだった。
久しぶりに研究室に卒業研究のために来たA子の表情は明るかった。
「先生、教育実習は楽しかったよ」
A子はそう言って、教育実習の話をし始めた。
(↑ 話し終わった後、卒論を取り組むA子)
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A子が担当したクラスに、不登校の女の子がいた。
週に1日、友人に連れられて午前中登校するだけだった。
ある日…
A子は時間があいたので、その生徒と話をした。
A子は一生懸命に話を聞くだけだったが、その生徒は心を開いてくれた。
これまでの辛かった出来事を、涙を流しながら語った。
教育実習の最終日…
A子はクラス全員にメッセージカードを配った。
そこには、生徒たちの長所が書かれてあった。
生徒ひとりひとりの顔を思い浮かべ、長所を考え、ことばにする作業はとても大変だった。
授業の指導案を作ることよりも、大変な作業だったという。
そのカードを受け取った生徒たちは感激し、クラスの女の子全員が涙を流した。
そして…
あの不登校の生徒も、登校してきた。
A子の教育実習の最終日のため、わざわざ登校したのだった。
メッセージカードを受け取ったその生徒は、泣きながらA子に言った。
「先生、教員採用試験に合格して、来年私のクラスの担任になってください。そうしたら、私、登校できると思う。」
このことばを聞いて、A子も泣いてしまった。
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若いってすごいことだと思う。
授業が下手でも、生徒への接し方が下手でも、生徒の気持をつかむことがある。
だから、教育実習にはドラマがある。
ただ…
A子の場合、教育実習が楽しかっただけに、普段の大学生活のペースに戻り切れていなくて困っていた。
「勉強のやる気がでな~い!」
まあ、ぼちぼち、勉強をするんだよ。
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A子から教育実習の話を聞いたその日…
今春卒業したゼミ15期のB子とC子が研究室に遊びに来た。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
研究室のドアを思いっきり何回もノックして、研究室に入ってきた。
この荒々しい行動は、在学中と変わらない。
二人とも元気そうだ。
(↑ B子とC子)
B子は学習塾に就職した。
仕事が終わるのが午後10時で、帰宅するのは午後11時過ぎ。
夜遅くまで働くと、疲れが残る。
でも一応、順調に仕事をしている様子。
彼との交際も続いている。
B子は,社会人になって、ぐっと大人の雰囲気になった。
色っぽさが漂っている。
B子は私へのお土産を持ってきた。
大学のコンビニで買ったポテト。
「先生、これ好きでしょ。」
そう言って、私に差し出した。
(↑ B子が買ってきてくれたポテト)
昨年、卒業研究の指導のため遅くなってしまった時、夕食としてコンビニで買った記憶がある。
おそらくB子は、この時のことを覚えていて、私に買ってきてくれたのだろう。
B子の気持ちがうれしかった。
C子は宅配会社のドライバー。
20キロもある荷物を何個も運ぶことがあるらしい。
研究室で運転時の安全確認のしぐさを再現してくれた。
「左よし、右よし、後方よし」(確かこんな感じ)
すっかりドライバーの雰囲気だ。
二人とも、大学生からだんだん社会人になっていく感じがした。
二人に卒業式の写真を見せた。
この写真は、私のカメラで撮っているので、二人は見ていない。
そこには晴れ姿でにこやかな顔が写っている。
「どう、すごい綺麗に撮れているだろう。俺が撮ったんだ。」(自慢)
「ほんと、綺麗!」(B子)
ゼミ生たちが卒業していったのは、ほんの数ヶ月前だけど、遠い昔のようにも感じられる。
今度は、他のゼミ生を研究室に連れてくるように、二人に伝えた。
特に東京で研修中のゼミ生や、レンタカー会社に就職し、落ち込んでいるゼミ生をー。